曲がりくねった道の先で
はぁ、と吐いた溜め息が、青空に消えていく。
市役所の陰の小さな公園で、僕は今日も独り弁当をつついていた。
春の異動で、希望する部署への転属は叶わなかった。新しい部署には顔見知りもおらず、心細い毎日だ。
「ん……?」
ふと地面を見ると、アスファルトにチョークで迷路が描かれていた。いたずらにしては、やけに複雑な迷路だ。一見して出口は見つからない。
……ははぁ、なるほどね。
僕は正しいルートを見つけ、落ちていたチョークで入口から出口までの長く曲がりくねった線を引いた。報酬はないが、小さな達成感があった。
……そろそろ職場に戻らないとな。
翌日の昼休みにまたそこへ行くと、なんと迷路が追加されていた。昨日のものに勝るとも劣らない、大きく複雑な迷路だった。
……誰が作ってるんだ?
顔も知らない作成者のことが、非常に気になった。
僕はまた時間をかけて出口までの線を引いた。
すると、ゴールの先に小さな字で「おつかれさま」と書かれていた。
僕は、その隣に「ありがとう」と書き足した。
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