#1分で前を向く物語

卯月 幾哉

君と一歩、前へ

『いま何してるの?』


彼は今日も未読スルー。知ってた。彼がスマホを見るのは朝と晩、1回ずつだ。私はもっと話したいのに。……私って、重いのかな……

そんな日々が3か月も続いた後に、私は別れを切り出した。彼は大慌てで理由を尋ねてくる。


「わからないの?」


私が泣きながら訴えると、彼は深々と謝った。

本当は自分も話したいんだと。でも歯止めが利かなくなるのが怖くて、ずっと我慢してたんだと。

私は彼の本音が聞けて嬉しくなった。私たちはよく話し合って、互いが納得できるルールを決めた。


「――ねぇ、聞いてる?」

『もちろん』


……今夜は、好きなだけ話せる。


その次の日。

彼は人生で初めて、寝坊をしたそうだ。

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