「清流」のせせらぎ

海翔

第1話

 7月も終わりに近づきこれから本格的な暑い夏を迎え、舞衣は毎日汗を掻く日々が続いていた。

そこに同僚の詩央里さんが「涼しいとこに出かけたいですね」

それを聞いていた翆さんが「京都にある川床に行きませんか?」

「川の上に床を作り、そこで食事をするんですがなかなか涼しいですよ。この時期は鱧の時期でこの時期しか食べることができないものなのでぜひとも行ってみませんか?」

それを聞いて舞衣さんは「行ってみたいですね。夏休みもまだ取っていないので行きましょう」

詩央里さんも「私も休みまだでどこに行こうか考えていたんですが川床は一度は経験したかったので行きましょう」

三人はさっそく予定を立てて7月の週末をかけて出かけることにした。

舞衣もこの時期の京都はまだまだ暑くそれなりの服装を用意して当日を迎えた。


 当日は朝から太陽が燦々と照りつけて暑い日だった。

待ち合わせの東京駅で待っていると翆さんと詩央里さんがこちらに向かって手を上げて近づいてきた。

さっそく切符を買って、飲み物、お菓子を買ってそれを新幹線に持ちこんだ。

 9時半の新幹線に乗って一路京都に向かった。京都に着いてから「詩央里さんがここから三千院に行ってみたいんですがここからバスに乗り寄っていきませんか?」

「ここで時間を調整してお店に行きましょう」三人はバスに乗り、三千院に向かった。

三千院は人気のあるところだけに旅行客が多く、バスも混んでいた。

 やっとの思いで三千院に着き、庭を見通せるいい席が取れたので三人はそこに座った。

舞衣はただ座っているだけで心が洗われる気持ちになった。詩央里さんは願いが叶い庭先にある小さなお地頭さんに手を合わせた。

それを見て翆さんが「詩央里さん何を祈っているのかな、、、」と聞いたら「ここに来れたことに感謝したの。また、秋が来ますように、、、」三人は庭先を見ながら静かな時間を過ごした。  

 一時間ぐらいしてから翆さんが「そろそろ食事にしましょう」そう言われ、そそくさと三千院を後にしてバス停に向かった。 

 その後を男性に呼び止められて、三人がこちらを向くと男性が「これ貴女たちのでは」と品物を渡したら、

舞衣さんが「これ私のです。祖母の形見の品物でどうもありがとう。そう言ってその品物を受け取った」

その男性は「これからどちらに」と聞かれたので舞衣さんは「鴨川に川床に食事に行きます」

「そうでしたか、私もこれからそちらに行きますので一緒に同行していいですか?」そう聞かれ、

詩央里さんに「どうぞいいですよ」と言われ、一緒に行くことにした。

その男性は自己紹介として名刺を渡した。そこには鴨川の川床の店の名前が書いてあり、市ノ瀬一磨と書いてあり専務と書いてあった。

そこはこれから行くお店だった。

舞衣さんは名刺を見て「これから私たちが行くお店です」

「そうでしたか、それでしたら私が道案内しますよ」

「そんなそんな専務さんに道案内なんて、、、」

「気にしないで下さい。私はこの清流の四代目なんです。一つの勉強として道案内させてください」三人は当初はバスで行く予定だったが市ノ瀬さんの好意でタクシーに乗り代わった。

タクシーに乗ってる間、一磨さんは観光案内をしてくれて無事お店に着いた。

店の前では店員が「お帰りなさい専務」と迎えてくれ

「お客さんを連れてきたのであそこの席にお願いします」と店員に言った。

店員は舞衣さん達を案内して川の縁の一番眺めが良く涼しいところに案内をしてくれた。

三人はこの場所に感激して「この席で良いんですか?」そう聞いたら

「専務からの言付けですからどうぞ、、、」

「そうでしたか、、、ありがとうございます」とお礼を言った。

三人はここで鱧の懐石を出してもらい満足した食事ができ感激した。

食事が終わった頃に一磨さんが来て「どうでしたか?ご満足できましたか?」

三人は「本当にこんなもてなしを受けて感激しています。ありがとうございます」そう言って三人はお礼を言った。

舞衣さんは「改めて9月に両親と京都に来るのでよろしければまた立ち寄らせてください」そう言うと、

一磨さんは「その時にはお電話ください」と言った。

三人は会計を済ませて今日泊まる宿のある京都に向かった。  

 ホテルに着き、三人は「いい人に出会えて良かったですね。こういう出会いは良いものですよ。旅行に出るとこう言う出会いを期待しながらなかなか難しいもんなんですが、、、」

そういいながら、三人は浴室に向かい、今日の疲れを流しに行った。三人とはよくお互いの家に泊まりに行く関係でこうやって3人揃ってお風呂に入りに行くことはそうはなかった。

ここのホテルのお風呂は思っていた以上に大きくサウナも付いていた。

さっそく三人は裸になって、上がり湯を身体に浴びて、先ずは炭酸湯に入った。

温度はそれほど高くはなかったけど炭酸の泡で身体中が温まっていく感じだった。

そこから舞衣はサウナに入り、5分もしたら詩央里さんと翆さんは「これは暑い」と言って早々サウナ室を出て水風呂に入ってしまった。

舞衣はまだまだこれくらいはと我慢して10分後にサウナ室を出て来た。身体中を真っ赤にしてそのまま水風呂に入って「気持ち良かった」と二人に言った。

スッキリしたところで三人は浴室を出た。

部屋に戻ってレストランに夕食を食べに出かけた。食事を済ませてから夜の京都を散策した。東京とは違う古き京都の佇まいを身体で感じてホテルに帰った。


 朝になり、朝食後に京都近辺を回って午後の新幹線で帰ることにした。今回は今まで経験したことのない川床を経験して鱧料理の懐石を食べ、一ノ瀬さんに出会ったのが大きな収穫だった。

そして、またいつもの変わらない生活を三人は送っていた。


 あれから1週間が立ち、舞衣の電話に一ノ瀬ですがと留守番電話が来ていたので、電話をかけてみたら「清流の一ノ瀬です」と電話に出たので舞衣は「先日はありがとうございました」そう話したら、

「実は今度東京の旅行会社の人と冬に向けての企画を相談しに来週そちらに行くのでもしよかったら、お会いしたいなと思い留守電しました」

「そうでしたか。私の方は構いませんよ。先日のお礼を兼ねて、、、」

「そうですか、それでは週末の夕方にお会いしましょう」

舞衣は「仕事が終わり次第、一磨さんに電話入れますね」

「それでは電話お待ちしています」それで電話は切れた。

舞衣はまた、一磨さんに会えることが嬉しくて自然に顔がほころんだ。


 そして週末がやってきた。

午後から仕事がソワソワして仕事が手につかない感じだったが無事終わらして一磨さんに電話を入れた。

一磨さんは「私の方も無事商談が成立してやれやれの気分です。これからソニービル前で待ち合わせしましょう」30分後に一磨さんと会うことができ、それからレストランで食事した。

レストランでは肉料理がメインでお酒も飲んで気分も浮き上がってしまった。でも、帰る頃には少し足を取られ帰るのもおぼつかなかったので、一磨さんに誘われてホテルに泊まることにした。舞衣にとっては憧れていた人だったのですべてを任せた。

でも、一磨さんは「酔った人を抱くことは騙したようでそんな気持ちにはなれない」と言って、何もしないで舞衣さんをベッドに寝かしてくれた。


 翌朝、舞衣が目を覚ましたら、一磨さんは浴室でシャワーを浴びていた。

舞衣も裸になって浴室に入ると一磨さんはビックリしたような顔をしていると、舞衣は「私も一緒にシャワーを浴びさせて」と言って中に入ってきた。

二人は一緒に頭からシャワーを浴びて昨日の酔いを覚ました。そして、二人は抱き合って口づけをした。

舞衣は「一磨さん私を抱いてください」と小さな声で囁いた。

一磨は「いいのか」と確認して舞衣とともに寝室に移動した。二人はバスタオルを取り全裸になり、ベッドに横になった。

そして、抱き寄せて口づけをした。

舞衣は小刻みに震え「優しくお願いします」そう言って一磨にすべてを委ねた。

一磨は軽い刺激と激しい刺激を加え、舞衣は激しく興奮をした。舞衣は何もできないまま一磨さんを受け入れようとしていた。そして、二人は一つになった時に一筋の涙を流して喜びを伝えた。

一磨も舞衣の中のすべてを、、、そして、ぐったりとベッドに倒れた。ベッドには微かに鮮血の跡が残っていた。

それを見て一磨は「初めてだったんですね、、、」そう言われ、舞衣は「一磨さんにあげて良かったです」

一磨はそれを聞いて「ありがとう」と言った。

そして、二人でシャワーを浴びて汗を流して部屋を後にした。

 レストランでモーニングを食べて香り高いコーヒーを飲んでゆっくりした時間を過ごした。

舞衣は「今度9月の中旬に京都に行きます、その時は両親とお邪魔しますのでよろしくお願いします」

一磨は「その時には最高の料理でおもてなししますから、、、それと、9月の初めに旅行会社にまた来ますので今度はその時にまた会いましょう」

それを聞いて舞衣は「ハイ」と返事をして「その日が楽しみです」と一磨さんに話した。

朝食が終わり、二人はここで別れ、舞衣はそのまま自宅に帰った。

 ここ数日暑い日が続いており、外から帰ると汗でびっしょりだった。部屋に入り、エアコンを付けて部屋の温度を下げ、舞衣は着ているものをすべて脱いで浴室に入り冷たいシャワーを身体に浴びて汗を流した。

 今日、一磨さんにこの身体を抱いてもらい、何とも言えない幸福感を舞衣は感じた。シャワーの飛沫が髪を濡らし、乳房を濡らして行くとまた、一磨さんに抱かれるような気持ちがした。冷たい水が身体を覚ましてくれた頃、バスタオルで水滴を取り、浴室を後にした。

居間に移動するとエアコンの冷たい風で心地よく、舞衣はこの前に会社の帰りに買っておいたコーヒーを作ることにした。

お湯を沸かし、挽いた豆にお湯を通して香り高いコーヒーが出来上がった。最近はマンデリンの香りに惹かれてよく買うようになった。そのコーヒーを飲みながら、朝の一磨さんとの行為のことをふっと思い出していた。

 そこに携帯電話が鳴り、見てみると翆さんからで「相談があるのでお邪魔していいですか?」と言われ、

「どうぞいいですよ」と話すと「15分後にそちらに寄ります」そう言って電話が切れた。

15分後に翆さんが冷たいものを買ってきて部屋にやって来た。「舞衣に相談したくて、、、」

「どうしたの、、、」

「実は同僚の井上高志さんと今付き合っているの. それで私結婚しようかと悩んでいるのだけれど、どうしてもまだ踏み切れない自分がいるのね。決断が早いのかなと、、、」

「彼はどう言っているの」

彼は「自分が主任になるまでは待ってもらいたいと言ってるの君を養いために自信を持って迎い入れたい」と言うの

舞衣は「高志さんの気持ちを受入れてみては、、、それだけ貴女のこと考えてくれているのなら、、、」

「何となく私不安な気持ちだけが起きてしまって」

「それも分かるけどまずは彼を信じてやったら」

「うん」そう言って翆さんは「彼の気持ちを信じるは、、、」

「このまま行ったら翆さん結婚第1号ね」と舞衣は言った。

翆は「そうなるといいですが、、、」

「舞衣さんは彼氏は出来たの?」

「うん、、、出来たような出来てないような、、、」

「もしかしてこの間の清流の専務さん、何処となく雰囲気で感じていたんですが」

「分かってましたか?私はこれからなのでまだ憧れですがなれたらいいですが、、、」

「うまくいくと良いですね」

「うん、、、」そして、他愛のない話をして翆さんは家に帰った。  

 その後に一磨さんから電話が来て「無事京都に帰りました。次回会えるのが楽しみです」

舞衣は「私もです」そう言って電話を切った。

その間何度となく一磨さんから電話を受け、お互いの気持ちを近づけていった。


 そして、9月の初めに一磨さんとの約束の日が来た。

週末の仕事を終えて約束のホテルに出かけ、食事をしながらいろんなことを2人で語り合った。

10時を過ぎて、舞衣は一磨さんの泊まるホテルに行き、今日はここで過ごすことにした。部屋に入り、熱い抱擁と口づけをして舞衣は浴室に、、、その後を追うように一磨も浴室に、、、シャワーを浴びて湯に浸かった。二人はじゃれ合うように抱擁をした。

そして、浴室を出てそのまま寝室に、そして会えなかった寂しさの分、激しく求めあった。

舞衣は激しく悶え、直ぐにでも一磨さんを受け入れたかった。一磨も興奮が極致に達して、二人は一つになった。

舞衣はこの快楽の中に飛び込んで何とも言えない幸福感を味わった。二人はぐったりとベッドに倒れた。

 もうどのくらい経ったのか?舞衣は疲れ果てたのか、一磨の腕の中でぐっすり眠りについた。

一磨も何も言わずにそのまま眠りについた。


 翌朝、一磨が目を覚ますとそこには舞衣は居ず浴室でシャワーを浴びていた。一磨も裸になり「おはよう」と中に入ると「おはよう」と舞衣は返事をした。

そして抱き合って朝一番の口づけをした。二人はスッキリした気分で一磨は舞衣を抱きしめて寝室に行き、より深く愛を確かめあった。

舞衣はどこまでも続く快楽の世界に身を沈め、すべての欲望を一磨に求めた。そして激しく悶えて舞衣は逝った。

その後を追うように一磨もぐったりと舞衣に重なった。

 しばらくは何も話さなかったが、汗を流して、舞衣は「今月の中旬に両親と京都に行きます。その時はよろしくお願いします」一磨は「その時には舞衣さんとの交際を話します」それを聞いて、舞衣は嬉し涙に濡れた。

そして、ホテルで朝食を食べて別れた。


 両親との旅行の日になり舞衣は朝からソワソワしていた。

両親に今日会ってもらいたい人がいるのでここで食事をしたいと言ってあった。

家を出て、8時頃の新幹線に乗り、鴨川の清流に向かった。一磨さんには昼頃に着くことを連絡しておいてあるので店の前についたら、一磨さんが出迎えてくれて、仲居さんに奥の部屋に案内された。

 そこで三人がお茶を飲んでいると一磨さんが入って来て「今日は清流にお越しくださいましてありがとうございます」そう言って、名刺を父親に渡した。

舞衣は「先日話した両親に合わせたい人とは、一磨さんのことです」そう紹介され、一磨は「よろしくお願いします」と挨拶をした。

父親はひと目見て、安心したようで「色々なことがあると思いますが娘をよろしくお願いします」と話すと、みんな和やかな気持ちになった。

そして、料理が運ばれて、和気あいあいと話が進んだ。食事が終わり帰る頃には一磨さんが「今度は私の方から両親を紹介しますのでその時はよろしくお願いします」そう言われ、舞衣の両親も微笑んでそれを受け入れた。

 そして、今日泊まる予定のホテルまでの間、タクシーの中で父親は「まーちゃんいい人に出会ったね。幸せになってね」そう言われ目頭を熱くした。

 ホテルに着くとちょうど結婚式があったのか、二人を中心に写真撮影が行われていた。

三人は次は私たちもこのような写真撮影をするのかと思い慕った。

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