まずはじめに。
この物語は、サクッと読めるファンタジーをお探しの方向けではありません。
どーーーっぷり世界に浸りたい、いやもはや住みたい、旅をしたい方向けの作品です。
重厚な地の文から漂うのは、土地の色、匂い、そして文化や歴史まで。異世界がまるで現実にそこに有るかのように錯覚するほど、彼らの世界が「視えます」。
また、二人の主人公。
彼らには各々抱える事情があり、過去があり、痛みがあり、強さがあり、同時に弱みもある。まるで、一人の人間かのように。
二人がやがて時間を共にし、信頼を重ね、確かな絆を作り上げていく過程が、丁寧に丁寧に綴られています。
史実をなぞらえているかのような、すばらしき冒険譚。
圧倒的な没入感を味わいに、さあ共に参りましょうーー!
さいごにひとこと。
作中の料理がめちゃくちゃ美味しそう。
食べてみたい。お腹空いてるときに読んじゃだめですよ。
一言紹介にあるように、この作品は作者様の確かな文章力による地の文が素晴らしいです。重厚でありながら、流れるように読める綺麗な文章に、文字を追いかける目が次へ次へと進んでいきます。
戦闘描写では、場面ごとの細切れではなく、繋がった一つの映像のように脳内で再生され、臨場感や緊迫感を味わうことができます。
登場人物達の現実味溢れる動き。彼らの確かな技を楽しむことができ、アクション・バトルを存分に、余すことなく楽しめるでしょう。
また、世界観の描写も巧みです。ストーリーの流れ、登場人物の言動から、この世界の文明レベル、情勢等の情報をただの説明ではなく、物語として伝えてくれます。
登場人物の心情の移り変わりも、些細な言動の変化からうかがえるので、読み応えがあり、多方面から満足感を得られる作品です。
今後の物語の動き、登場人物の過去と未来。とても楽しみに待っております。
一見全く別の世界のような、それでいて悲劇の話から、物語は始まる。
一人は、荒れ狂う海の中、絶え絶えとなる意識を揺らし。
一人は、狂った死神と呼ばれた剣士の終わりを見つめながら。
そして男は目を覚ます。
記憶を失くし、過去を忘れ、それでも喉に詰まる思いに頭を焼かれながら、その場を凌いでいく。
オルグレン──その名前が記憶に残っていた自分の名前。
話す言語、世界の情勢、自分という存在、そして仄かに残る過去の記憶。
様々な情報に悶えながら、彼は白髪を携え、自身を流れ人と称すロゼと出会う。
ロゼもまた、並々ならぬ過去を持っており──?
そして二人は共に征く。先へ、ただ先へ向かうために。
重厚な世界観、大波乱の物語。
そして謎を少しづつ紐解いていく。
きっと全てを読んだ時、あなたもまた、この世界の住人になる。
是非オルグレンやロゼ達と、この世界を歩んでみませんか。