Blood Karambit ~氷姫と血染めのワルツ~
@WadakamaRin
第1話 プロローグ
〈プロローグ〉
彼が歌うのは、決まって夜の
酒場の扉が
金糸の髪を背に流した吟遊詩人は、片隅の椅子に腰を下ろし、木製のリュートを抱えた。指が弦をかき鳴らすと、空気は震え、酒の匂いと笑い声が渦巻く空間に、物語の始まりを告げる静寂が落ちる。
その周りにいたものすべてが息を呑んで言葉に耳を傾ける。
その刃を持つ者は問われる
お前は何を犠牲にしても力を望むのかと
ブラッドカランビット
それは半透明な三日月
握った者の血にのみ応え
世の
禁断の刃
リュートの旋律が、ゆっくりと次の和音へと移ろう。
「だが、忘れるな。理を超えるということは、人の道から外れるということ。この刃は力と引き換えに、心を、魂を、じわじわと
彼は顔を上げ、火の灯る酒場の中央で静かに高らかに宣言した。
「
*
それは、死者の都を生み出した史上最悪の歪みと、一人の少女の戦い。
その群れの前に立つのは、名も知れぬただ一人の少女。水色の長髪を束ね、月光に照らされて冷たい光を宿す瞳。彼女の手にあったのは半透明の刃
――禁忌の
「準備はできたわ。さあ、ともに踊りましょう?」
少女はそう告げると静かに手首を裂き、流れる
そして月明りに照らし出された彼女の影が呼応するように淡く赤色に輝くと血は花びらとなって宙に舞う。
ひらり、ひらり
花弁は緋色のドレスに変じ、少女は舞踏会の主役のように夜を翔けた。 骸骨の軍勢が迫る。だが、紅の羽は刃となって彼らを斬り裂き、夜空の欠片へと返す。ワルツは加速する。死者の軍勢は次々と飲み込まれ、死神の弦は悲鳴とともに
最後の旋律と共に、少女は舞い上がり、赤黒の槍を振り下ろした。
残されたのは、朝焼けに照らされた静かな墓地。少女は一礼し、夜に溶けるように去っていき、人々はその姿を夜明けと共に夢のように忘れてしまった。
*
人々は、彼女をこう呼んだ。
幾世を経てもなお消えぬ伝説
――血染めのワルツ
*
これは永遠に語り継がれる、歪みの夜の伝説。
夜の帳の下で今も人々の胸に響き続ける。
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