精霊に愛されし錬金術師、英雄ヒロインたちに囲われる~数年前に武器をあげた幼馴染たちが首都で英雄に成り上がっていた~
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第1話 突然の再会
「よし、できた!」
少年──アルタは汗を
手元には、たった今製作した木の杖を持っている。
後方を振り返ると、それをお年寄りに渡した。
「はい。これで歩きやすくなるよ」
「いつもありがとうねえ」
「どういたしまして!」
アルタはものづくりが好きだった。
幼い頃から
この
「今日も役に立てたよ、おじいちゃん」
アルタの育て親は、一人のおじいちゃん。
どこかで孤児だったアルタを拾い、この村で育ててくれたのだ。
彼の唯一の教えは『人の役に立ちなさい』という言葉だった。
その教えを心に刻み、アルタは今日も善行を積んでいる。
「あ、もう昼か」
頼まれ事を終えると、ちょうどお昼頃になっていた。
小腹も空いたことで、アルタは休憩に入る。
その中でふと思い出す。
「みんなは何してるかな」
アルタには数人の幼馴染がいた。
それぞれ
たまに手紙をもらっているが、事細かな近況は聞いていない。
「俺の武器、使ってくれてるといいな」
幼馴染が旅立つ時、アルタは製作した武器をあげた。
どれも当時の最高傑作である。
しかし、アルタはふっと笑みを浮かべた。
「でも、首都にはもっと凄い武器があるんだろうなあ」
幼馴染が行った首都には、国中の才能が集まるという。
そんな人達に比べれば、自分は辺境のちっぽけな存在。
アルタ自身はそう考えていた。
「持ってくれているだけでもありがたいか」
アルタも幼馴染の足は引っ張りたくない。
そんな思いからの言葉だろう。
そうして少しの休憩を終えると、アルタはある場所へ向かう。
「さて、午後からは
◆
午後、アトリエにて。
「今日も始めるぞ」
先程とは違い、アルタは鋭い眼差しを浮かべている。
集中した顔つきで使っているのは、“
日々人助けをするアルタには、もう一つの顔がある。
それが“
今は亡きおじいちゃんから技術を引き継ぎ、毎日一人で
「お、きたきた」
しばらく作業をしていると、錬金釜の中央に道具が浮かんでくる。
両足セットになった
これだけでも十分だが、まだ完成ではない。
「精霊よ」
アルタが呼びかけると、背後に複数の色鮮やかな影が出現する。
“精霊”と呼ばれる存在だ。
「今日も力を貸しておくれ」
おじいちゃんから習った錬金術。
その定義は、“道具に精霊の力を込める技術”だ。
これは精霊の声を聞く才能があってはじめて使える。
どれほど貴重な才能かはアルタ自身も知らない。
だが、村ではおじいちゃんとアルタしか扱えなかった。
そして、アルタは複数の影から黄緑色を選ぶ。
「今回は風でいこうか。──錬金」
選ばれたのは風の精霊。
アルタが精霊と共に力を注ぎ込むと、道具は光を帯びていく。
すると、やがて一つの道具が完成した。
「できた! 【
風の精霊の力を宿した靴だ。
満足そうな笑顔から成功したのだろう。
アルタは笑顔でうなずくと、アトリエ内を見渡した。
「だいぶ作ったなー」
このアトリエには、他にもたくさんの道具が並んでいる。
全て錬金術で製作したコレクションだ。
ただ、村の人には危なくて渡せない。
「たまにとんでもない物が出来上がるからな……」
錬金術は、良くも悪くも“効果が高い”。
制御不能のスピードが出たり、武器ごと爆破したり、等々。
そのため、錬金術産の道具はこのアトリエに保管している。
錬金術で作った道具をあげたのは、幼馴染のみ。
「
幼馴染に授けた時は試用してもらい、向こうから欲しいと言われた。
使い方も説明したので、きっと大丈夫のはず。
とにかく、錬金術で作った道具には注意が必要なようだ。
「でも、やめられないんだよね~!」
それでも、アルタにとって錬金術は至高だ。
未知の物が出来上がる感覚はこの上なく楽しく、仕事の合間をぬっては研究を続けている。
道具もアトリエに収まり切らなくなってきた頃だ。
そんな時、アトリエの入口にノックがした。
「アルター、お客さんだよ」
「ちょ、ちょっと待ってね!」
村のおばちゃんの声だ。
アルタはさっと片付けながらも、首を傾げる。
(午後の予定とかあったっけ?)
来客の予定はなかったはず。
不思議に思いながらも、アルタは入口を開く。
すると、おばちゃんの隣には一人の少女が立っていた。
「ご無沙汰してるね」
「え、リゼリアじゃないか!」
立っていた少女の名は、リゼリア。
アルタの幼馴染の一人だ。
サラサラの長い銀髪に、少し前髪がかかった鋭い視線。
髪は後ろで留めてあり、スラリとした体型によく似合う。
立ち振る舞いも相まって、クールな雰囲気が
変わりながらもどこか懐かしい姿に、アルタは思わず駆け寄る。
「久しぶりー!」
「うん、アルタも元気そう」
「あはは、アトリエにこもっているけどね」
すると、アルタは早速気になることをたずねた。
「それよりすごいじゃん! リゼリアは最上級の“探索者”になったんでしょ!」
「ふふっ、手紙読んでくれたんだ」
「うん! 幼馴染として誇らしいよー!」
リゼリアは首都で探索者をやっている。
ダンジョンと呼ばれる迷宮で、秘宝を探索するロマン
首都では大人気の探索者だが、リゼリアはその最上級に登り詰めた。
その実績で、リゼリアは“英雄”と呼ばれている。
手紙で知った時はアルタも驚いたものだ。
アルタは上着を羽織りながら続ける。
「ていうか、帰省するなら歓迎の準備したのに! とりあえず僕の家に──」
「いえ、ちょっとここに用があって」
「アトリエに?」
だが、リゼリアはアトリエ内に興味があるようだ。
「よければ、中を見てもいい?」
「いいよ。でも触ると危ないから気を付けてね」
「……うん、それはもうヒシヒシと伝わってくる」
「ん?」
了承を得ると、リゼリアはアトリエにお邪魔した。
そのまま並べられた道具に目を向ける。
「こ、こんなの首都ですら……」
しかし、その顔はどこか引きつっていた。
それでも、アルタは特に気にせず声をかけた。
「珍しいね。リゼリアが錬金術に興味を持つなんて」
「錬金術もだけど、アルタが作った物が気になって」
「ふーん? って、それは!」
そんな中、アルタはあるものを見つける。
リゼリアが腰に差していた剣だ。
「俺があげた武器! まだ使ってくれてたんだ!」
「もちろん」
リゼリアに剣に手を添えると、真剣な眼差しで答えた。
「こんな“
「ん?」
その回答には、アルタは首を傾げる。
先程からちょくちょく引っかかる事を言っているからだ。
すると、リゼリアはアルタに真っ直ぐ向き直った。
「率直に言うね、アルタ」
最上級の探索者であるリゼリアは、アルタに手を差し伸ばす。
「あなたに今度の探索に同行してほしい」
「え……えええーーー!?」
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