第4話 事件現場
我々が居住しているこの一般社会は果たして普遍的な構造をしているものなのであろうか?
人間はどう頑張っても人間であり、アニメやSF映画のような非現実的な事象、あるいわ超能力といったものを持っている人間がいないという確証は100%証明できないとはいえない。普段、見ている光景や人々の中には世にいう『普通』というものからかけ離れた能力を有する存在がいることは
人間は見たままの部分でしか判断が出来ない。対象となる人物の背景や
水面下ではあらゆる事象で溢れており、その中には非現実的な事柄も含まれる。
たとえばそう、現在、普遍的な高等学校の生徒会室で談合に興じている士季と綺羅もその内に含まれるであろう。一見、ごく普通な男子高生に見えなくもないがそれは目に見える範囲での形であって、目視できぬ範囲では異能と呼べるものを備えている可能性さえもある。
—その知識を前提とした上で綺羅の説明を受けることが今の士季にとって必要だった。それくらい
「この写真を見て下さい」
唐突に綺羅から渡された資料の束。A4用紙で統一された、その上にはプリント写真があった。どこかの自然公園だろうか?
レンガ道の道路と
しかし、写真中央に映し出されたものが不可解である。
カメラのノイズにしてはあまりにも
「それは
士季が口を開く前に綺羅が呆気なくその正体をばらした。
「この写真どうしたんだよ?」
「ええ、
「そういうことを聞いているんじゃない」
着目すべきは不可解なそれについてだ。
「
「そんなことは分かっているよ!」
無論、この地域に居住している士季も公園のことは知っている。人通りが多く、平日であろうと休日であろうと人で混雑している盛況ぶりは地域住民であるならば全員、知っていることである。綺羅は「そうでしたね」と
「今回の事件現場はそこにあると
綺羅はそう言って、写真に写っている“それ”を指しながら
「ある地点に到達すると閉鎖空間が現れた。空間全体ではなく一部分しか撮影できなかったのは残念でしたが、おそらく空間が出現した瞬間を捉えたのでしょう。彼の身を案ずれば仕方のないことです。すぐに逃げたと言っておりました」
『そんな理由で親友を危険な現場に向かわせたのか』と自分の兄をドン引きの目で見る士季であった。最悪、空間に飲み込まれる恐れだってある。
「お前、最低だな」
「否定はしません」
綺羅の
「この空間が、行方不明者を飲み込んだという訳か」
「そう解釈するのが妥当でしょう」
「なんとまあ…」
綺羅から聞かされた、
士季は頭を抱えながら、よろめく。
放課後になって、まだ1時間も経過していないにも関わらず、士季の疲労は限界点に達していた。色々な話が頭に入り過ぎてパンク寸前といったところであろう。そんな士季とは
「事件現場が分かった以上、あとは簡単です。現地に
取って付けたような称賛には反応しない。士季は、もう一度写真を見る。「あいつ、写真のセンスねぇな…。ブレブレじゃないか。これでどうやって空間の霊脈を辿れって言うんだよ?」
「いえいえ。彼はよく頑張ってくれた方ですよ。本来ならフィルムに収まるはずのない異空間を撮影出来たのです。随分苦心したと言っておりました」
「だったらお前が行けば良かっただろうがよ。わざわざ他人を巻き込むな」
「もっともな意見ですが
士季の硬い表情を茶化すかのように、綺羅は
(もういい…)
おそらく綺羅は水面下で事件の調査をしているであろう。
いくら綺羅でも考えなしに、親友を
(こんな人でごった返している場所で、
士季の
「犯人もバカじゃないだろう? バレていたら今ごろ
能力者であれば分かる暗黙のルール。
“なべて能力は
かく言う、士季と綺羅も能力者である。
幼少の頃より唐突に宿った能力。
綺羅はかぶりを振って、真顔で答える。
「いくら混雑としている場所であっても、穴場はありますよ。誰も寄り付かない通りが1つ」
「それが、この写真に写っている遊歩道というわけか…」
「この通りを抜けてしまえば、廃墟地帯があります。バブル期に
「なるほどな…」
士季には心当たりがあった。
当時、この一帯を管理していた地主は絵に描いたようなナルシストとして、しつこく地元のテレビCMに出演していた。膨大な資産に物を言わせ、名声を
地主が行方をくらまして以降、この一帯に居住していた住人達は年々退去していき、最後の住人が引っ越してから、かなりの年数が経過している。管理者不在の街並みは、当時の
(まさか、こんなところで事件が起きるとはな…)
今までまったく意識することのなかった場所。こんな身近な所が犯行の
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