伯爵令嬢の後ろ姿

大町凛

 

今、私は王城で開かれたパーティー会場で皇太子に婚約破棄されているところだ。

理由は皇太子の横で殿下にしな垂れかかった男爵令嬢を蔑み、虐めたことだという。


くだらない。

たかが男爵令嬢になぜこの私がそのようなことをしなくてはならないのだ?

私がこんな小娘に嫉妬したと?

大体、私はこの皇太子のことを好きではない。

勉強嫌いのダメ皇太子のお守り係として、王命で勝手に婚約者に仕立て上げられたのだ。

幼い頃からの妃教育の数々。

結婚前から遊びまわる皇太子の代わりに日々仕事を押し付けられていた。

嫉妬などしてこんな女に嫌がらせなどする暇などあるわけがない。


ほくそ笑みながら殿下に縋りつき、好き勝手言う男爵令嬢が腹立たしい。

まんまとそれを信じるバカ皇太子がこれからこの国を率いていくと思うと嘆かわしい。

そしてこれまで国のために努力してきた年月を考えると、大人しく言うことを聞いていたことが悔しくて泣きたくなった。


しかしここで腹を立てたり、涙を流すなんて無様な姿は見せたくない。

私は目を閉じて深呼吸をした。


私の十数年の努力の結晶をとくと見るがいい!


凛と姿勢を伸ばし、ゆっくりを目を開ける。

そして、鏡を見て練習させられた美しい微笑みを浮かべた。



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