伯爵令嬢の後ろ姿
大町凛
今、私は王城で開かれたパーティー会場で皇太子に婚約破棄されているところだ。
理由は皇太子の横で殿下にしな垂れかかった男爵令嬢を蔑み、虐めたことだという。
くだらない。
たかが男爵令嬢になぜこの私がそのようなことをしなくてはならないのだ?
私がこんな小娘に嫉妬したと?
大体、私はこの皇太子のことを好きではない。
勉強嫌いのダメ皇太子のお守り係として、王命で勝手に婚約者に仕立て上げられたのだ。
幼い頃からの妃教育の数々。
結婚前から遊びまわる皇太子の代わりに日々仕事を押し付けられていた。
嫉妬などしてこんな女に嫌がらせなどする暇などあるわけがない。
ほくそ笑みながら殿下に縋りつき、好き勝手言う男爵令嬢が腹立たしい。
まんまとそれを信じるバカ皇太子がこれからこの国を率いていくと思うと嘆かわしい。
そしてこれまで国のために努力してきた年月を考えると、大人しく言うことを聞いていたことが悔しくて泣きたくなった。
しかしここで腹を立てたり、涙を流すなんて無様な姿は見せたくない。
私は目を閉じて深呼吸をした。
私の十数年の努力の結晶をとくと見るがいい!
凛と姿勢を伸ばし、ゆっくりを目を開ける。
そして、鏡を見て練習させられた美しい微笑みを浮かべた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます