第26話 もう・・・・バカ
同棲していることが話題になった朝の時間から、母さんの取り巻きは男子から女子にシフトした。
気まずくなってしまったのだ。
女神ファンの男子は、俺と言う存在が咀嚼できずにいるようだ。
憧れの女性と同棲(同居ね)している男子が、クラス内に居る。その事実が青春真っ只中の高校2年男子生徒を悶々とさせた。
語らない空気の中に、男子たちの思惑が交錯する。
無言の圧力は、結局俺に突き刺さる。
・・・・いや、マジ、なにこれ。
母さんの隣に女子が輪を作り始める。委員長はそこに加わらない。
それがまた、俺の目には違和感しか生まない。
3時間目の休み時間、委員長は演劇部の、と言う事で俺の席に来て話を始める。
クラスで部活の話をするのは初めてだ。
教室中の視線が、俺に向く。
誰だって解る、これまで会話すらしてこなかった二人が、急に話を始めれば、それは目立つことだから。
女子は、気にしてませんと言う表情で、母さんと会話を楽しむが、今度はこっちの視線も痛い。
そして、一番意外だったのは、母さんの視線だ。
こんな視線、初めてだ。
睨んでいるわけではないけど、あまり好意的な視線にも見えない。
「でね、今日は衣装合わせもあるから、星野君も準備お願いね」
「え? ああ、うん、大丈夫、俺の衣装、パンツ一丁だから」
「もう・・・・バカ」
おいおい、聞き耳立ててたクラスメイトが、なんだか固まっていないか?
違うぞ! 演劇の話だぞ! 放課後にパンツ一丁になる話を委員長とするバカはいないだろ! ちょっと考えればすぐに解るじゃん!
ってか、みんな俺が演劇部に入った事を知らないよな。
今日はどうした?
女神さんと同棲して、破廉恥な事して一緒にお風呂入って、委員長と放課後パンツ一丁って・・・・変態だな。
冷静にそこだけ聞いたら・・・・
変態だな、俺。
えー、この空気の中で、俺、放課後まで過ごすの? ・・・・なんか辛いよそれ。
昼休み、母さんが作った弁当を食べながら、「それ、女神さんの手料理?」「そいつぁいいなあ。君、僕のと交換しないか?」などの取引を持ち掛けられるが、当然断る。
中には、法外な対価を提示するヤツまで出始めた。
ヤバイ薬の取引みたいになってきたぞ? だから、俺ははっきりと言ってやったんだ
「いい加減にしろ、母さんが作ってくれた弁当を、
闇取引を持ち掛けてきたクラスメイトは、蜘蛛の子を散らすように去ってゆく。
まったく、失礼な奴らだよ。
俺は、母さんの弁当を結構気に入っている。
大きな弁当箱に、ぎゅうぎゅうに詰め込んだこの弁当、作るの大変だろうに。
俺の言葉を聞いて母さんの表情が、とても嬉しそうだったって話を、俺は後からクラスの女子に聞いた。
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