機鎧騎士ゼヴォシオン――狼被りの撃墜姫――

渡士 愉雨(わたし ゆう)

プロローグ

 かつて、戦争があった。


 地球を侵略しようとする異星人ルオーゴルと、地球人との戦争が。


 遥かなる星間連盟のルールにより与えられた『対等な技術』。


 それを解析、発展させることで、地球人たちは勝利手前までルオーゴルたちを追い込んだ。


 しかし、異変が起きる。


 地球連合対異星人軍の主力の1つであった『ある部隊』が裏切り、異星人と共謀――地球に反旗を翻したのだ。


 同規模の主力部隊により『ある部隊』は倒されたものの、戦力バランスは大きく崩れた。

 

 このままでは地球側の敗北は必至――そう考えた主力部隊は、イチかバチかの決戦を挑む。


 それにより、ルオーゴルに少なからずの打撃を与えたものの、勝利には届かず。


 双方痛み分けの形で講和へと至った。


 そうしてルオーゴルとの共存の道を歩み出した地球人類。

 

 しかし、それは徐々にルオーゴル優位の社会へと変貌しつつあった。


 戦争終結後の戦力的バランスがそうさせていったとも、 

 異星文化初遭遇の地球の未熟さが表れた結果とも言われている。


 それに不満を抱くものが世界各地で争い、平和になったはずの地球は、穏やかとは程遠い状況となっていた。


 ただ、そんな中でも地球人類の大半が抱く、共通の思いが1つあった。


 それは――かの『ある部隊』さえ裏切らなかったら、こんな地球にはならなかった、という思いに他ならない。


 そうした不満や憎しみを束ねた結果『ある部隊』は『裏切り者部隊』と呼ばれるようになり、地球人類の恥さらしとされていた。


 一方『裏切り者部隊』を倒した主力部隊は『英雄部隊』と呼ばれ、戦後もルオーゴルと対等に向き合っている在り方を称賛されていた。

 

 そんな『英雄』たちとルオーゴルの強い影響下で、今なお混迷が続く地球。  


 この物語は、真実と虚構が入り乱れ、憎悪と正しき怒りが錯綜する青い星を駆け抜けた……とある、かつての撃墜王……ならぬ、撃墜姫だった、1人の女性の物語である。

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