なれの果ての黙示録
@iu_karasu
第1幕 鎌を持った死神
第1話 弄ぶ天使 救う悪魔
目の前の光景を認識したくないそんな気持ちに駆られる。
目を背けたいが、家族が生きているかもしれないという小さすぎる希望のせいでできなかった。
夢だと思いたかった。しかし、家族の体が冷めていくのを肌が感じ、それを否定するのである。
そして、高みの見物をしている天使は笑っていた、絶望し下を向く自分を
変動歴700年6月7日 日本天使軍領地
「もう、起きて兄ちゃん」
そんな声に僕は目をこすりながら起き上がる。
「何ボケっとしてるの?学校に遅れるよ。」
すこし辛辣にそういうと妹は部屋を出て行ってしまった。
服を着替え、暖かい日差しと散らかった布団のある自分の部屋を後にして、リビングに向かう。
「やっっと起きてきた」
母は少しあきれたようにそういうと朝食を出してくれた。
朝食を食べながらスマホを開く。
もうすぐ本格的に受験勉強を始める影響で僕はいつもは開かないニュースアプリを開き、高校でちょうど習った内容に関係があるニュースが目に留まった「停戦から300年、100回目の三勢力代表会談」
(たしか、停戦の条件として3年に1度、それぞれの代表が東京に集まって話し合いをするんだっけ。…って時間やっば!)
ニュースが気になって時間を思ったよりも使ってしまったため、急いで朝食を食べ終わり、家を出ようとすると、父が
「急いでいるからって弁当を忘れちゃいけないよ」
と、弁当を手渡してきた。
「
「…いってきます」
小さい声だったが聞こえたらしく、ドアを閉めるときにちらりと見えた父は少しうれしそうにしていた。
家を出て6つ目の交差点で信号待ちをしているとき、影が自分の上を通り過ぎ、おもわず上を向くと日本天使軍の白い望霊が飛んでいるのがみえた。
普段こんなところまで飛んでこないと思いながらも、遅れそうになっていたため、国にとって重要なあの行事があるからだろうとさっさと結論をつけて、さっきまでよりも急いで学校に向かった。
遅刻ギリギリで校門を通り抜け、階段を上り、教室の前まで行くと教室内はいつも通り騒がしくしていた。
教室に入り、てきとうに友達とのあいさつを済ませ、自分の席に着き一息つくとクラスメイトの一人の
「また、時間ぎりぎりで登校してきたの、かわらないね~」
七門は僕の幼馴染で小中高と同じ学校に通っている。
そして、家族ぐるみの付き合いもあり、僕よりもしっかり者であるため、母からは「色葉ちゃんを見習いなさい」とか「色葉ちゃんは昨日自習室に勉強しに行ったらしいわよ。成瑠はどうするの?」とか言われたりしている。
…がその一方で、
「なんかうれしそうだね」
「だって、成瑠が反省文書いてる困った顔が面白いんだよねー」
僕に対して意地悪いところがあり、僕は少しめんどくさいと思っているが、クラスメイトにこのことを相談しても「ちくしょう、爆発しろ」などと言われるため、あきらめている。
「そういえば成瑠、高校に入ったら彼女作るんだっていてたけどまだなの~」
と、にこにこしながら言ってくる。
「まだ、本気を出してないだけだよ」
「ふ~ん、なんなら私が彼女になってあげてもいいんだよー」
「うるさい、そろそろ時間だから席に戻っとけよ」
「はいはい、じゃー戻りまーす」
そういうと七門は席に戻っていった。なぜか周りからの視線が痛い気がする。
そして、先生が教室に入ってきて朝礼と授業が始まった。
すべての授業が終わり放課後になると、僕は所属しているパソコン部の部活動に向かった。ただ、パソコンでゲームを部員でしているだけの部活なのだけれど。
ゲームをやりこんでいると思ったよりも時間が経っていて、時計は6時を回っていた。
外は少しずつ薄暗くなり始めていた。僕以外の家族はたぶん家に帰っているだろう。
帰り道を歩いて家が見えてきた時、視界の右端に白い閃光が見えた。はじめは流れ星だと思っていた。 ……がなにかがおかしい。しかし、それに気づいたとき、その閃光は僕の視線の先に移動していた。
そして…僕の家に直撃し爆発した。
僕は鉄砲玉のように走り出した。「家族は大丈夫だろうか」「大丈夫、まだ家族を助けられるはずだ」そんな会話が頭の中でぐるぐると回っている。
家の一番近くの曲がり角をバランスを崩しながらも曲がり、目の前に僕の家が見えた、家が全壊し所々で火が出ており、周りには人だかりができていた。僕は何を思ったか燃えている家に突っ込んでいった。
そこからはよく覚えていない。気づいたときには目の前には冷たくなった家族がいて、体の全身が痛んだ。
周りに集まっている人はただに僕を恐怖や哀れみの感情とスマホのカメラを向けて、何一つ動こうともしない。
そんな時、上から声が聞こえた。
「これからここは日本天使軍の管轄になった早急に立ち去るように」
この言葉に人々はぞろぞろと誘導され、どこかに行ってしまった。
下を向いたままの僕に上から天使は話しかけてくる。
「君この家の人?目の前のものは家族?」
「…そうです」
消え入りそうな声だがはっきりと僕は返事をした。僕は期待した、その人がどうにかしてくれると。
しかし、天使の次の言葉は救済でも同情でもなかった言葉が聞こえた否定したいほどの言葉が現実を突きつけるように無慈悲に
「もみ消すのがめんどくさくなった」
と、はっきりと聞こえた。
僕は理解が追い付かなかった。
「もみ消すって何を」「まさか大丈夫だよ」頭の中で自分たちを守っていた天使軍の言葉とは思えないあの言葉をなんとか僕の常識の中で収めようとしていた。しかし、
「ふざけて投げた槍がまさか民家にあたるなんて誰が予想するかな~」
「さっきまで楽しんでたって言うのになんでこうなっちゃうかなー」
「こんな
連続して出てくる心無い、一切、人を大切にしないどころか見下している言葉に天使いやあいつらは僕らを守ろうとなど一切考えていないと理解した。
「なぁ、君このことを忘れてくれない?いや、今まで起きたことすべて忘れろ」
この言葉に僕は燃える家に飛び込んでいった時のように我を忘れた。
ただ、あの時と何か違うことがあるとするなら、
「なぜ、よりによって、今、ただでさえめんどくさいのに」
我に返った時、
正直、いい気味だと思ったが、なぜそこまでの反応を
僕が望霊に、しかも、もっとも日本天使軍と関係の悪い黒の望霊になってしまったからである。
さらに、自分の変化にも気づいた。全身の痛みが消え、体がとても軽くなっているように感じた。
いまなら、目の前の
そう思い一歩踏み出した時、急に後ろに吹き飛ばされ、壁に打ち付けられる。
不思議と痛みはなかったが
「勘違いすんじゃねぇぞ、ガキが」
そういって、手のひらから僕の家族を葬った白く光る槍が現れ
「お前も家族と同じところに送ってやるよ!」
と、言い、その槍を僕に向かって投げつけてきた。
僕は全く反応できなかったが何か強い力に左から押し出された瞬間左肩に衝撃が走り、後ろの壁を突き破る形で吹き飛ばされた。
気がつくと、左肩にはあの槍が刺さっていて動けない。だが、やはり全く痛みを感じない。
しかし、
「くそ、運のいいやつめ」
「さっさと消えろくそ野郎が」
と、動けない僕に向かって散々暴言を吐いた。
そして、槍を投げようとしたとき、突然ぴたりと
何が起きているのか考える間もなく
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