充たせ、充たせよ鼎
狩野緒 塩
青年と神獣の出会い
第1話 邂逅
「うっ……すみません」
さらに目立つことには、
ぶつかって振り返った男が、
「うわっ、罪人か?」
一人の呟きから人々の視線が
「本当だ、髪が短い」
「でも、罪人は赤い短衣を着ているはずだろう?」
「じゃああれだ、髪が木の枝にでも絡まって千切れたんだろうよ」
「なんにせよ、ああはなりたくないな」
「…………!!」
酷い言われようであるが、この時代髪の毛を切られる罰があるほど、長くのばされた髪の毛は大切であった。
◆
人ごみを抜けると大きな門があり、門を抜けると住居の立ち並ぶ場所に出た。
「あれ、君、何をしているのですか? 地面の真似?」
その声で、
「君、そのまま地面の真似をしていても良いけれど、あの人たちは君の追っ手でしょう?」
「……え」
青年の指さす先を見ると、
追っ手たちと目が合う。
「いたぞ、あいつだ!」
すると、裾が泥だらけになるのも構わずに、青年がしゃがみこんで
「その傷だらけの身体を休ませたほうがいいです。君の代わりに
青年が微笑みかけてきたが、
「……危険だから、やめたほうがいい。どうせ逃げても……俺は”あの場所”に戻されるだけだ」
「
どうして
青年が立ちあがり、追っ手たちと対峙した。朗々と、そして不遜に追っ手たちに語りかける。
「
そう言い終えた瞬間、青年――もとい
「ひっ……!?」
「何をぬかしてやがる!
「嘘をついているんじゃないのか?」
「こいつを逃してしまうと、
追っ手たちが口々に叫び、武器を構えて
「うぉおおおおりやあああ!!」
追っ手の一人が剣を振り上げ、
「うぉっ!? 何をしやがる!」
それを見た残りの追っ手たちも武器を構えて向かってくるが、金色の
「くそっ…………」
繰り返すこと数十回。さすがの追っ手たちも疲れてきたようで、息は切れ、手からは今にも武器が抜け落ちそうだ。
「幾度やっても同じことだ。それよりも、君たちは為すべきことがある。
「怪我はないですか。いやあ、
「だってお前、人間を食うんだろ…………?」
それが、二人の出会いだった。
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