8月7日(2)知られたくない気持ち
「檸檬ちゃん…。」
柚は気まずそうにその子を見つめた。
その子は不機嫌そうに俺達に近付いて来ると、俺をジトっと見てきた。
「最近どこかに出かけてると思ったら…。」
「この人正宗くんて言うてね、ここに来た時に仲良くなったんや。」
柚はいつものにこにこしながら俺の方を見た。
「正くん、この子私の妹なんだ。檸檬ちゃん。よろしくね。」
「…どうも。」
俺の挨拶に檸檬はペコッとお辞儀をすると、柚の方を見た。
「看護師さんがお姉ちゃんの事探してたよ。レントゲンの検査とかで。」
「そうやった!今日検査あるからちゃんと居ってね言われてたんやった!」
檸檬の言葉にハッと思い出した様に立ち上がり、俺の方を見てまた微笑んだ。
「じゃあまた今度ね、正くん。」
「お、おう…。」
バタバタと掛けていく柚を檸檬が見送り、また俺の方に目線を戻した。
「正宗さん、でしたっけ?」
「は、はい。」
「お姉ちゃんの事、どうにかしたいとか思ってるならやめてください。」
急に核心を突いてきた言葉に、つい俺は息を飲んだ。
「仲良くせんでって事ですか?」
「…お姉ちゃんが傷付くのを見たくないんです。」
「教えて下さい。柚は何で入院してはるんですか?」
俺の問いに檸檬は気まずそうに俯きながら、言葉を続けた。
「あなたは知らなくていい事です。まして男の人なんて…私は許さない。」
一体柚の過去に何があったのか。
それを知っても俺は柚に会いたいと思えるのか。
ふと柚の笑った顔が頭に浮かぶ。
俺は檸檬をじっと見つめ、また言葉を続けた。
「俺は柚を傷付けようなんて思うてません。だから、教えてください。柚は…何の病気なんですか。」
檸檬は俺の真剣な眼差しに驚きながら、息をつき、悲しげな表情を浮かべ話した。
「…お姉ちゃんは長く生きられないって言われてるんです。」
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