第2話 地下へ


 地下の労働施設へは、運営側が用意したバスで移動した。敗残者だらけのバスの車内は意外にも活気づいていた。皆、さっきまで友だちの首を飛ばした連中で、その時の興奮が冷めやらないのだ。中には無謀にも友だちを一人しか用意できなかった男もいて、その男は地下の労働施設から出ることができた日には、今度は友だちを百人も作って小山の上で握り飯を食べるのではなく、円の中心を狙って一億円を取るのだ、と豪語していたが、そんな輩があまりにも多過ぎた。わたしは地下の労働施設から出れないことを知っていた。実際には何年か後に救済措置のようなものが存在して、このバスの車内にいる誰かは出られる可能性もあるのかもしれない、とかそんな甘い考え方が、今わたしたちが置かれている現状なのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る