第41話 巨神兵探索と道中の誤解コンボ

翌朝。俺たちは北の街を後にし、“巨神兵”が眠るという山岳地帯へと向かっていた。街の出口ではまた見送りの群衆が集まっている。みんなが手を振り、花を投げ、泣いている人までいた。


「おお、勇者様! どうか巨神兵を討ち倒し、この地に永遠の平和を!」

「無理だってぇぇぇ!」

――《解析:マスターの“平和維持力”が社会的に誤解されています》

「もうなんだよその力!」


街を出る馬車の上で、薬草少女はノートを開いていた。

「これで第六章“巨神兵編”の開幕ですね!」

「勝手に開幕すんな!」

「ちなみに章題候補は“巨神と胃痛の果て”です」

「胃痛がメインじゃねぇか!」


道中は険しい山道。岩場を越え、霧の谷を抜け、冷たい風が吹きつける。普通なら緊張感のある旅のはずなのに、同行する護衛隊はなぜかずっと笑顔だ。

「勇者様の旅に同行できるなんて光栄です!」

「いや、俺ただの常時ツッコミ担当だから!」


途中、立ち寄った山小屋では、老夫婦が温かいスープを振る舞ってくれた。俺は礼を言おうとしたのだが、老人が神妙な顔で言った。

「……あなたが“奇跡の投擲”の勇者様ですね」

「その称号いつまでついてくるの!?」

――《補足:通称が定着しすぎて、法的に改名レベル》

「やめろぉぉぉ!」


その夜。焚き火を囲んでの休憩中、戦士がふと笑いながら言った。

「だがよ、あんたがいなきゃ、誰もこの旅を信じて進めねえよ」

「……俺が?」

「ああ。誤解でも希望になるなら、それでいいんだ」

――《解析:名言判定。引用される確率95%》

「名言化すんなぁ!」


だがそんな静かな時間も束の間だった。夜空に光が走り、遠くの山腹がドーンと爆ぜた。巨大なシルエットが浮かび上がる――まさかの巨神兵、まさかのリアル出現。


「ひぃぃぃ! 本当にいたのかよ!」

薬草少女が叫ぶ。「ついに来ましたね、第六章のボスです!」

「ゲーム感覚で言うなぁぁ!」


ゴゴゴゴゴ……地響きが連続し、山全体が揺れた。巨神兵は岩を砕きながら立ち上がり、赤く輝く双眼をこちらに向ける。その存在感だけで、俺の胃が縮み上がる。

――《解析:巨神兵、戦闘力指数2300。マスターの逃走力0.2》

「逃げる前に絶望を数値化するな!」


仲間たちはそれぞれ武器を構えた。戦士が剣を抜き、少女が弓を構え、青年が地形を確認し、薬草少女が謎の液体を準備している。俺は……もちろんその場で叫んでいた。

「もう帰ろうよぉぉぉ!!」


しかし、巨神兵の動きは異様に鈍い。どこか眠りながら動いているようで、完全に目覚めてはいないらしい。

「……なんか、起こさなければ平気そうじゃないか?」

――《提案:マスターが声を出さなければ安全》

「お前いまフラグ立てたよな!?」


その瞬間、俺の足元の石が崩れ、派手に転倒した。ガンッ! その音に反応し、巨神兵の眼がギラリと光る。

「おおおおおぉぉ!?」

「勇者様が叫びで巨神兵を目覚めさせた!」

「違うぅぅぅぅ!」

――《登録:新称号“神を呼ぶ男”》

「呼びたくなかったぁぁ!」


こうして、巨神兵との戦いの火蓋が――またも望まずに――切られてしまったのだった。

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