第40話 巨神兵級モンスターと勝手に盛り上がる人々

北の街での英雄譚シリーズ化が定着した翌日、さらに恐ろしい噂が舞い込んできた。山岳地帯の奥深くに“巨神兵”と呼ばれる存在が眠っているというのだ。


「いやもう、名前からしてアウトだろ! 巨神兵とか絶対ラスボスだろ!」

――《解析:巨神兵級。推定戦闘力、マスターの2000倍》

「数値がもう笑えないレベルだよ!」


街の広場では早くも人々が「次の伝説が始まる」と勝手に盛り上がっていた。

「英雄様なら巨神兵すら倒せる!」

「次の章は“天空の守護者”だな!」

「第五幕“石割り”に続いて、第六幕“神を討つ者”か!」

「俺の物語を勝手に進めるなぁぁ!」


吟遊詩人たちは早くも新曲の構想を話し合っており、行商人は“巨神兵決戦前グッズ”と書かれた旗を売り始めている。俺は胃を押さえながら叫んだ。

「準備が早すぎるだろ! まだ戦ってもいないのにグッズ展開すんな!」


仲間たちも相変わらずだった。戦士は「腕が鳴るな」と笑い、少女は「伝説に“巨神兵編”が加わるのか、楽しみだね」と肩をすくめ、青年は「囮としての役割はさらに重要になる」と真顔で言う。

「俺の胃を囮にすんなぁ!」


薬草少女はと言えば、例のノートにすでに新しいページを作っていた。

「英雄様の第六章……“巨神兵との死闘”ですね!」

「だから勝手に章立てすんなぁぁ!」

――《補足:英雄譚シリーズ化、章数無限拡張モードに突入》

「そんなモードいらない!」


街長まで壇上に立ち、群衆に向かって高らかに宣言した。

「勇者殿が巨神兵を討ち、この大陸に真の平和をもたらすのだ!」

「ちょっと待てぇぇぇ! 俺はそんな約束してないからぁ!」


だが人々の熱狂は収まらない。広場には「勇者様巨神兵討伐祈願」と書かれた巨大な布が掲げられ、子どもたちは岩を積み上げて「ゴーレムごっこ」から「巨神兵ごっこ」へと進化していた。俺の胃は本格的に崩壊寸前だ。


「……なぁ、ほんとにやらなきゃダメか?」俺は弱々しく呟いた。

「もちろんです!」薬草少女が笑顔で答える。

「英雄様がいる限り、みんな安心なんですから!」

――《解析:誤解の規模、街単位から国家単位へ拡大予定》

「やめろぉぉぉ! 誤解をインフレさせるな!」


こうして、俺はまだ見ぬ巨神兵との戦いに向けて、勝手に立てられた期待と誤解の渦に飲み込まれていくのだった。

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