1話 入学試験の簡単さ
数年後、15歳になった私は村を離れることになった。もし大学校に合格したら寮生活なのだ。
「じゃあ、元気でな」
お父さんは私を泣きながら送り出した。お父さんは今48歳、いつポックリ逝ってもおかしくはない年齢だ。それに貴族殺しが嗅ぎまわっているし今は村長の保護下に置かれている。
「お父さんも元気でね」
私はそう言うと送迎の馬車を待った。大学校は遠方から受験に来る受験生を支援するために送迎制度を設けている。大学校は生徒に寄り添うという校風がある以上、過保護だと大人たちから言われているが私たち受験生や学生にとってはありがたすぎる校風だ。
(数十年住んできたこの村とは一旦のお別れかぁ、なんだか寂しいなぁ)
遠くからやってくる馬車が見えてくると私は再びお父さんの顔を見た。だけどお父さんは後ろを向いていた。悲しさなのだろうか、後ろ姿は娘の旅立ちと居なくなる悲しみが見えた。
「お父さん、いつか私は帰ってくるよ、だからそんなに悲しまないで」
「いいや、いいんだ。ステラはステラの人生だ。だから……人生を楽しんで来い」
私は少しだけ笑うと馬車が到着した。
「じゃ、私はもう行くよ」
私は荷物を持って馬車に乗り込むとその馬車はゆらゆらと揺れながら走り出した。私は村から一歩も出なかった、だから今日私は初めて村の外に出た。そして私は村の外の空気を思いっきり肺にため込んだ。
(これが村の外の空気か、なんだか同じように匂う)
外の様子を見ると果てしない草原、遠くに見える山岳。あと申し訳程度の魔物が見えた。
(こんなに外の世界は広かったのか……本でしか見た事のなかった光景が今、目の前に見えてる!)
テンションが上がってくると魔力がどんどんと体に染み渡ってきた。
(おっと、テンションを上げすぎちゃったら暴走しちゃう、落ち着かないと)
目の前の景色に私は興奮していたが気分を落ち着かせた。
(しかしこう見てると世界が輝いているように見える、すごいよ)
子供のように気分をあげていると馬車が止まった。
「ヴェリテトゥルー大学校に着きました」
「ここまで運んできてくれてありがと」
私は馬車の操縦をしてくれた人に感謝を伝え、馬車を降りた。
「すごぉぉ」
私の目の前に広がった光景、それは大きなヴェリテトゥルー大学校だった。
(私の知らない世界っていろいろとあるんだ、すごいなぁ)
私は学校の係員に案内されるがまま筆記試験会場に向かっていった。
「2……3……5……7……」
「計算学に言語学……うわぁぁぁ!!」
周りの声がざわざわと聞こえてくると正面に試験官が入ってきた。
「はい、静粛に。試験を開始しますが注意点を言います。カンニング行為、また魔法を使っての妨害行為は退場してもらいますので、よろしくお願いします。では150分間の試験を開始します、スタート!」
その声が鳴り響くと周りにはアンチマジックシールドが張られた。
(へぇ、アンチマジックシールドをこんな規模で張れるのか、この学校にはものすごい先生が居るのね)
通常アンチマジックシールドは発動者の周りしか張れないはず。だが努力次第では効果範囲が伸びるのだ。
(あれ、この問題なんだか見覚えがある。これもこれもこれもこれも)
私は見覚えのある問題が紙に書いているのに気が付いた私は羽ペンを使ってどんどんと書いていった。
(周りはとても悩んでいる様子だ、それほど難しいのかな)
そして私は150分の試験だが40分の時点で全部書き終えた。
(これって時間を余らせた方が得点多いのかな)
私は周りをちょっと見るとまだまだペンを動かしている様子が見えた。そして試験官が私に気が付き、試験用紙を見た。
「なっ……これは」
試験官は試験用紙を見て手を震わせていた。それは私がすべての問題をすべての狂いも無く、パーフェクトに書いている事だった。そして試験官は私と問題用紙の両方を交互に見ていった。
(信じられないっていう顔だなぁ、どうしてこれが分からないんだろう)
その時試験官は私の手首を掴みどこかに連れていこうとした。
「やめて!私カンニングしてない!」
試験官は無言で私の手首を掴み別室に連れていった。そして試験官は口を開いた。
「カンニングとは疑っていない。だが150分の問題を40分で解くとは」
「いや、これ独学で学んできたので完璧にできました」
私は満面の笑みでそう言うと試験官はドン引きした。
「それで、時間を余らせた私に追加点は無いんですか?」
「無い、だが実技試験はトップバッターになる。今のうちに休んでおくといい」
試験官は学校の資料と共に採点されている試験用紙を渡してくれた。
(いつの間に試験用紙に採点を……魔法で採点を?)
資料にも目を通すとそこにあったのは内部の資料だった。そこに書かれていたのは筆記試験合格者の定員数と実技試験合格者の定員が書かれてあった。
(筆記試験合格者の定員数は900人、そして実技試験は300人+6人と書かれているな。でもどうして最終合格者は306人ではなく300人+6人なのだ?)
私はなぜ306人と書かれていないのかが引っかかっていた。そして試験時間が終わると受験生たちは休憩し始め、私は試験官の案内で元の席に戻っていった。そして周りを見ると出口に向かっていく人たちがいた。恐らく不合格だった人たちなのだろう。
(しかし受験者が多くて出口がパンクしている、それか暴れている人がいるのだろうか?)
そして私含む900人は実技試験の会場に向かっていったのだった。
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