4-1

 昨晩野営をした場所に戻り、ユーリイはテントを張った。

 ランスが昨日整地してくれた場所ならば、野営でも寝心地は悪くないはずだ。


 あの場で、ランスには解毒剤を飲ませた。

 意識があったら拒まれたかもしれないが、口移しでなんとか一口だけ。


──耐性があって、解毒剤も飲んだ。マスクもしていて、毒を吸引はしていない。


 それだけ条件が揃えば、命の危険は無い。

 それは今までの経験から知っている。


 だが、手の震えが止まらない。

 このまま二度とランスの意識が戻らなかったら? という恐怖が、ずっとまとわりついている。


 ユーリイは、焚き火の傍でジッと身動ぎもしなかった。

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