13. 看病③

「おかゆ作るなら…冷凍庫にご飯があるからそれ使ってね」

「分かった」

「あと、梅干しが冷蔵庫に入ってるはずだから、一つ乗せて欲しい、塩はほんのちょっとで大丈夫」

「了解、作ってくる」


 あれからあるまの近くにいてあげて、そろそろご飯を食べなきゃいけない時間。俺は後でいいとして…おかゆを作らないとな、と思っていたら、あるまが教えてくれたので、それに合わせて作ることに。


「えっと、これをこうして…こうすればいいのね」


 今の時代、スマホで調べればなんでも出てくる時代。料理が苦手な人でも、勝手にアレンジを加えなければ、そこそこの料理が出来る。まぁだからと言って、料理を勉強しない理由にはならないけど。


「…たまにあるまと一緒にご飯を作るにしても、言われたことをやってるだけだしな」


 そのおかげで、調理器具の扱いには慣れたんだけどね、あるま様々だな。とか言ってたらもう完成した。これをあるまの部屋に持っていく。


「おかゆ、出来たよ」

「やったー、ごはんだー」


 なんかさっきより幼児退行している気がする。


「大丈夫?、食べれそう?」

「だいじょーぶ、全然行ける」


 そうして一口掬ってあるまの口に運んで…あ、冷ましてなかった。完成してすぐに持っていったからアツアツだ。だから息を吹いて、冷ましながら食べさせることに、


「あむ…おいしいよ、ありがと」

「そりゃよかった」


 そうしてずっと食べさせていたのだが…


「そろそろ冷めてきたから、冷まさなくても食べれるかな?、じゃ、はい」

「やだ!、ふーってして!」

「えぇ…?」

「やって!」

「わかった、分かった」


 小さな子供のように怒って、頬を膨らませる。控えめに言って可愛い。


「ふー、ふー…はい、どうぞ」

「ありがと〜」


 そして全部食べ終えてから、


「じゃ、この食器持って降りて洗ってくるから」

「………」

「ん?」


 あるまが俺の服の裾を掴んで話してくれない。


「どうかした?」

「…離れないで、どこにもいかないで」


 …あぁ、そういえば昔は俺もそうだったな。インフルエンザになって、家で寝込んでいた時、一人になって時に、そのまま自分は誰にも見られず死んでしまうんじゃないかって、不安になったことがあったっけ。きっとあるまも…


「………」


 とても不安そうな顔をして、こっちを見つめている。


「…仕方ない、洗い物が大変になりそうだけど」


 あるまのベットに戻ってその手をぎゅっと握ってあげる。


「…安心して寝られるまで、傍にいてあげる」

「…ありがと」


 ずっとあるまの傍で手を握っているうちに、俺も眠ってしまっていたらしい…誰かに肩を叩かれる。


「ん…一体どうか…!?」


 今は何時だ?、どれくらい寝ていた?


「今は、午後の11時よ」


 そう言って声をかけてきたのは…


「あるまの…お母さん?」

「そう、あなたの事は、あるまからよく聞いてるわ、今日もありがとね、本来なら母である私が傍にいてあげなきゃいけないのに…」


 少し寂しげに、あるまのお母さんは語る。


「あなたに会ってから、今に至るまで、本当に変わったわ、あるまは。毎日楽しそうにするし、なんでも覚えるし、家事に関しては、私顔負けになっちゃっわ、あ、自己紹介してなかったわね、私の名前は、宵闇よいやみ 瑠奈るな。話の通りあるまの母よ」

「いつも、ありがとうございます」


 俺は、最大限の感謝を伝える。


「感謝を言うのは私の方よ、普段一緒にいてあげられない私に変わって、ずっと一緒にいてくれてるようなものだからね」

「いえ、そんな事はないです…あるまをここまで育ててくれたかた、俺と出会うこともできたんですし、今の、この幸せがあるんです。そして、あるまに救ってもらえたから、こうして傍にいてあげられるんです。だから、俺はあるまに感謝すると同時に、お父さんとお母さんにも、感謝しています。本当に、ありがとうございます。」


 本当に、何回もいうが、あるまに助けてもらったからこその今なんだ。だから俺は一生を賭けて恩返しする、一生を添い遂げると言う覚悟がある。


「ふふ、実際に会って話すのは初めてだけど…あるま、優しいこと巡り会えたのね…。これからも色々と大変なことがあると思うけど、一緒にいてあげて欲しいわ」

「言われるまでもないです、もとよりそのつもりですから」


 あるまのお母さんと話し終えた俺は、自分の家に帰って、軽く夕食をとって、お風呂に入って、改めて眠りにつくのだった。

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