14. 優しさに甘えて

 翌日の朝…


「それで…もう大丈夫なの?」

「うん!、みりが傍にいてくれたおかげだね!」


 俺が傍にいたところで病気が治る速度は変わらないと思うんだが…、本人が幸せそうなのでヨシとする。


「でも、朝起きた時にみりが居なかったのは寂しかったなぁ〜、昨日寝るときは手を握ってくれてたのに手を握ってくれてたのに」

「まぁ…泊まるわけにもいかなかったからさ、」

「でもさ?、みりが私と一緒に住むようになれば全部解決しない?、そしたら毎日一緒のベットで寝られるし、一緒にお風呂も入れる。私がご飯も作ってあげるし、身の回りのことはなんでもしてあげる、私が全部やってあげ…」


 なんか俺全部管理されそうになってない?


「なんかそれに頼りっきりになるとダメ人間になりそう」

「ダメ人間にして私から離れられなくするのが目的なんだからそれでいいの!」

「それは俺にも男としてのプライドがあるからそれはちょっと…」

「もーーーー!」


 ちゃんと、俺としては自分がちゃんと働いて、あるまのことを養ってあげたいと思っているから。


「でも、でも、必要なところでは、ちゃんと私を頼ってね?」


 ちょっと不安の混じった声であるまはそう言った。いつものように俺にぴったりついて歩くその姿も、不安から来てるもののような、そんな気がする。


「困った時に、あるま以上に頼れる人は居ないよ」

「絶対に…絶対だからね???」


 不安にヤンデレ味の圧が混ざってなんと言い表せばいいのかわからない表情になっている。


「大丈夫、大好きだから、」

「うぇ!?、あの、その、ありがと…」


 不安を抱えた相手に気持ちを伝えること、それがいかに大事であるかを、俺は知っている。だからこそ、言葉をかける。


「そんなこと言って…死ぬまで大好きで居てもらうんだからね?」

「もちろん、だからあるまもね」


 こういう俺も、結構重たい人間なのかもしれないな。


 〜〜〜


 私は宵闇あるま。みりが風邪を引いたから学校が終わった後に看病しに行った。そしたら次の日に私も風邪を引いちゃった。幸いみりは次の日には治ったみたいで学校に行けたみたい、それで家に一人で誰も居ない、寂しいなって思ってた時、


 みりが看病しに来てくれた。


 ずっとお話聞いてくれたし、自分一人でのなれない料理をして、冷ましながら私に食べさせてくれた。


 えへへ、風邪引いたりした時って、ほんとに人肌が恋しくなるんだね、小さいことからお父さんもお母さんも仕事で忙しかったから、なかなか甘えられなかった。だけど、人に甘えられるってこんなに安心するんだってことに気づいた。


 寝る時に手を握って傍にいてほしいって言った時も、何も言わずにずっと手を握っていてくれた。私はその暖かさに包まれながら眠ることができた。


「…もう一回風邪引かないかなぁ…」


 みりに迷惑をかけてしまうかもしれないけど、自分もしんどくなるけど、それでもまたああやってほしいって思えるほどの安心感があった。


「ん?、どうかした?」

「…いや、なんでも、ただ、みりは優しいなって」

「…恋人が風邪ひいたら、気にかけてあげるのが普通だし、お礼を言われるようなことじゃない」


 そんなこと言いながら、耳は真っ赤になってる。照れてる照れてる、可愛い。なんでこんなに可愛いのにそれを出そうとしないんだろう。ツンデレっていいよね〜、って、ずっと赤くなってる顔を見つめてたら、そっぽを向いてしまった。恥ずかしがることないのに〜


 今はこんなに幸せだけど、それでも私のところから離れてしまうんじゃないか?、って不安になることがある。できるだけ縛り付けたくはない、でももしかしたら?、という疑念を払うことはできない。最近、みりに不穏な視線を向ける人も居るし…どうすればいいかなぁ…って、ずっと考えてる。


 優しいのはいいんだけど、みんなに優しくしすぎるのはダメ!、私のみりが取られちゃう!。だからたまに釘を刺すし、登校中も、私のものってことを周りに知らしめる。そのおかげか、みりに声をかける女子を見なくなった。


 私はどうしようもなく重たい子だってわかってる。それを許してくれるみりに甘えてるってこともわかってる。だけどこんな私を、本当の意味でわかってくれるのは、きっと後にも先にも、


「みり、だけだから」

「ん、やっぱりどうかした?」

「いや〜?、ただ呼びたくなっただけ」

「なんだそりゃ」


 私がずっと見てる、私だけが一生傍にいる。絶対どこにも行かせはしない。死ぬときは一緒だよ、みり。

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