第5話 相良龍二
パラメーターを上げると決意してから数日。今は6月の初旬だ。
ゲームのパラメーターには若干のクセがある。どういうことかというと、数値が上がりやすい項目と上がりづらい項目があるのだ。例えば運動のパラメーター。これは非常に上がりやすい。相対する勉強のパラメーター。これは上がりづらい傾向があった。比率で言えば3対1といったところか。
俺はその事実を把握していたし、学生の本分は勉強である。授業を受けていれば、心持ち次第で嫌でも上がるのである。
――そう言えば、ゲームでは授業でパラメーターが上がることはなかったけど、実際はそんなこともないんだな。
これは嬉しい誤算だ。現実であれば当たり前であった。
◇
俺という人間がどういう人間か。まぁ、普通の一般的な男子高校生だろう。
まだ慣れないが、眠い目を擦って起きる。日課となっている筋トレとランニングだ。初日は3キロで根を上げていたが、5キロは簡単に走れるようになっていた。
今日は雨が降っているので、生乾きの少し臭いレインコートを着て走り出す。
自宅に戻り、簡単にシャワーを浴びて朝食を食べ、家を出る。朝のルーティンだ。
「なんか、制服ちっさくなったな…」
そんなことを呟きつつ、まだ登校時間には余裕があるので、のんびりと歩いて登校した。
◇
午前の授業を終えて、一つ前の授業内容について頭の中で整理していると、後方の席から騒がしい声が聞こえてきた。
「あー、数学がマジで分からないよー。試験近いのにヤバいなー。萌さー。今度勉強教えてくれよ」
「湊くん、最近は遅くまでゲームばかりしてるからだよぉ。朝起こしに行っても全然起きないし、ちゃんと勉強しないと夏休み遊べなくなるよぉ?しいちゃんや茉莉ちゃんと遊ぼうって話してるのに」
「分かってるよ。萌が教えてくれれば大丈夫だって!そんなことより飯にしよーぜ!弁当持ってきてくれたか?」
「そんなことって…。もう知らないからね。はい、今日のお弁当だよぉ。」
甘く可愛らしい声で答えた
彼らの話を盗み聞きしていたクラスメイト――まぁ特に男子なのだが――男子連中の嫉妬と羨望により、教室の温度が少し下がった気がした。
佐藤湊。あいつは幼馴染に起こしにきてもらってるのか。弁当も作ってもらってる。
ゲームで佐藤湊を育てあげ、彼女を攻略した俺としては、なんとなくホッコリした気分である。
――王道テンプレ幼馴染かよ。尊いなおい。
そんなことを考えつつ、俺は佐藤湊の現在地について考察を始めた。
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