猫又巫女に癒されたい~山奥の神社で出会ったケモ耳美少女と過ごす、宿坊での忘れられない夜~

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1、山奥の神社で出会った巫女には秘密がありました

//SE シャワシャワ、ジリジリと複数のセミの声が聞こえてくる

//SE ザッ、ザッと砂利を踏む足音

//SE 足音が止まって一呼吸おいてから、本坪鈴ほんつぼすず(賽銭箱の上に下がっている鈴)を鳴らす音

//SE 拍手かしわでを打つ音


(寝ぼけた調子で。本殿の中でしゃべっているので、少し離れたところから聞こえる)

「はにゃぁ? お客さんですかにゃ?」


//SE ガラガラと本殿の引き戸が開く音


(主人公の目の前で、驚いて)

「うにゃぁっ! 本当にお客さんです!」


(慌てて取り繕って)

「ししし失礼しましたぁっ!」


(突然、思い出したように)

「あっ、わたしの頭巾――」


(ホッとして、やや小声で)

「よかった。かぶってる」


(怪訝そうな主人公に気が付いて、ハッとする)

「こ、この白い頭巾はなんでもないんです!」


(自信なさそうに)

「巫女装束に頭巾なんて変ですよね」


(ちょっぴり泣きそうな声で)

「き、気にしないでくださぁい……」


(主人公に質問されて)

「え? あ、はい!」


(神社に仕える巫女らしく、説明を始める)

「この神社は、お猫様を祀った珍しい神社です。辺鄙なところにあるので、めったに参拝客の方はいらっしゃらないのですが」


(主人公の質問に、やや困った雰囲気で)

「あぁー、招き猫がご本尊というわけではないのです」

「そうですかぁ、商売繫盛やお仕事運が開けると思って、遠路はるばるいらっしゃったと――」


(また自信を失って)

「うぅっ、お役に立てず申し訳ないですっ」

「あの、でも…… この神社にたどり着いたということは――」


(主人公に近づいて、上目遣いに)

「きっとお客さんには癒しが必要なのだと思います」

「だってこの神社は、ゆったりと日向ぼっこする、お猫様をお祀りしている神社なのですから」

「お客さんも猫になったつもりで、ぜひ、のんべんだらりと――」


//SE ザッと再び砂利を踏む足音


(主人公のうしろから慌てて)

「ふにゃあ! 帰っちゃだめですぅ」


(主人公の右腕にすがって)

「久しぶりのお客さんなんです」

「あの、そのっ――、ゆっくりしていって欲しいです……」


//SE サァァ、と風が梢を渡る葉擦れの音

//SE カナカナカナ、とヒグラシの鳴く声が聞こえてくる


「はにゃ? 急に夕暮れになっちゃいました」


//SE リーーーーン、と遠くから風鈴の音が聞こえる

//SE ボッと炎の燃え上がる音が左の方から聞こえる


「驚かせてごめんなさい! 石灯籠に火が入ったみたいです」


「はい。毎日、夕方になると自然に火が灯るんです」


「どうして? うーん、考えたことなかったです」

「センサーかにゃ? うんにゃ、付喪神つくもがみが宿ってるのかも」


(無駄に自信満々に)

「大丈夫です、分からなくても。だって、この神社の巫女であるわたしも分かりませんから!」


「あ、急に時間が進んだことのほうが気になりますか?」


「山の天気は変わりやすいって言いますからねえ。時間帯も変わりやすいのかも」


「とにかく、こんなに暗くなっては、街灯もない山道を帰ったら危険ですよ」

「今夜は宿坊に泊まっていかれてはいかがでしょう?」


「ええ。参拝客の方に宿泊いただけるように、宿坊があるんです。小さいんですけれどね」


「こちらへどうぞ」


//SE ザッ、ザッと砂利を踏む足音


(横に並んで歩きながら話す。寂しそうに)

「そんな、がっかりしないでくださいよぉ」


「確かにうちは金運上昇のご利益りやくはありませんが、居眠りするお猫様が与えてくれる癒しの力だって、充分にご利益りやくじゃないですかぁ」


「着きました! ここです」


//SE ガラガラと宿坊の引き戸を開ける音


「畳の匂いがしますか? 建物自体は古いんですけれどね」


「こちらの部屋へどうぞ」


「障子を開けると、中庭が見えるんです」


//SE カラリと障子戸を開ける音

//SE 鈴虫など、夜の虫たちの鳴き声が聞こえる(以下のシーンでは窓を閉めるまで、うしろでかすかに虫の鳴き声が続いている)


「お茶とお菓子を持って来ますね」


//SE パタパタと廊下を歩く足音


「お待たせしました」

「そちらの座布団に座っていただいて」


//SE 主人公が座る衣擦れの音


「ふふっ、旅館みたいですか?」

「ゆっくりしていってくださいね。うちの神社、奥に天然温泉も湧いてるんですよ」


「お茶、淹れますね」


//SE コポコポと湯呑にお茶を注ぐ音


(主人公に差し出すので、声が近づく)

「熱いですので、お気をつけて」


//SE サァァ、とひときわ強く風が吹き、梢を渡る葉擦れの音が聞こえる。


「あっ!」


//SE パサッと布が風に舞う音


(慌てて)

「頭巾が――!」


(自分の頭を隠そうとしている)

「はにゃぁ、見ちゃダメなんですぅ」


(泣き出しそうな声で)

「ううっ、頭の上に耳がついてるなんて怖いですよね?」

「お願いです、化け物扱いしないでください。お客さんに危害は加えませんから」


(心底、驚いて)

「ふえっ!? か、かかか可愛い!?」


(再び慌てて)

「ふにゃあっ、しまった!」

「わたし、手もこんなだから見せちゃだめないのに、うっかり両手で猫耳を隠してしまいました」


「えっ、この手もモフモフで可愛いなんて――」//戸惑う


「お客さん、優しいからわたしに気を遣ってくれているの?」


「ふにゃ? クリームパン?」//きょとんとしている


「わ、わたしの肉球のついた手が、クリームパンみたいで可愛いのですか!?」


「嘘じゃないって、そんな、そんな――」//照れている

「初めて言われました」


「ふえっ、この耳をさわりたいと!?」


(恥ずかしそうに)

「も、もちろん、さわっていただいて大丈夫です」


(距離が近づいて)

「ふにゃあ…… 耳のあいだを撫でられると眠くなっちゃいます」


//SE ゴロゴロと猫が喉を鳴らす音


「ひゃっ、またやってしまいました!」

「ごめんなさいっ! 人間さんの文化では、喉を鳴らすのは、はしたないんですよね!?」


「ふにゃっ!? 人間さんの喉はゴロゴロ言わないんですか!?」


「はにゃあ……また間違えちゃいました」


「えっ、もちろん手を握っていただいても大丈夫ですが――」//少し戸惑っている


「お客さん、本当にこんな姿のわたしのこと、気味悪くないんですね」


(主人公に手を触られて。至近距離で笑いをこらえるように)

「ふふっ、肉球ぷにぷにされるのは、ちょっぴりくすぐったいです」


「でも、お客さんの手、あったかい」

「わたし、ここでずっと一人ぼっちだったから、嬉しい」


「はい。わたしの仲間はみんな、いなくなっちゃいました」

「人間さんに怖がられて、嫌われて」


「わたしですか?」

「わたしは―― このおやしろを守るお役目があるから、ずっとここにいたんです」


「でも、よかった。お客さんみたいな人に出会えたから」


「ふにゃぁ…… お客さんに手を握ってもらってると、わたし安心して眠くなってきちゃいます……」


(ハッとしてひとりごとのように)

「い、いけないですにゃ! お夕食の用意をするのでした!」


「あ、あの、おまんじゅう食べて待っててくださいね。お夕飯、作ってきますから」


//SE パタパタと早足で廊下を歩く足音が遠ざかっていく




─ * ─




第二話は今夜、公開します。

猫又巫女さんの更なる秘密が明らかに。

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