俺をNTR系チャラ男と勘違いして上官口調の僕っ子生徒会長があからさまに口止め料のキスを毎日してきて困る。しかも月日と共に愛が重い通い妻化してメチャ可愛い
27「キス十七回目、後の超売れっ子メイド看板娘爆誕そのニ」
27「キス十七回目、後の超売れっ子メイド看板娘爆誕そのニ」
★☆
夜の帰り道。
ゆくゆくはスイーツ作りにもチャレンジしたい会長は、デザートの仕込みを見学させてもらい遅くなる 。一人で帰らせるわけにはいかないから理由を作り俺も最後まで付き合った。
「神無月、パイ生地とかデコレーションとかやっぱりプロの技はすごいな。素人とは全く別物だ」
「最強の一品を完成する為、単身海外へ武者修行しに行ったんだぞ。大型チェーンの雇われ職人とは背負っているものも気合も違うぜ」
「僕もケーキ作りが趣味でそれなりの自信があったんだ。しかしマスターが繰り出す技巧を目の当たりにして思い知らされる。如何に己が矮小な存在かと。自分の思い上がりと未熟さで火が出そうだ」
「それはそうだ。お店である以上は金を取るんだぜ。適当に生地こねた素人料理を出せるかよ」
疲れたかと聞こうとしたが必要なさそうだ。疲労より好奇心が上にあるのか、会長は興奮気味。いつになく上機嫌にトークが弾む。
さもあらん、マスターの卓越した技術を垣間見たらみんなああなる。本物の喫茶店経営するためにゼロから始めた真の硬派だ。
今では組合の要請で海やスキー場にも期間限定ながら店を運営している。
「グーの音も出ない……。これでもかなちゃんもとい彼方は絶賛しているが、所詮は家庭の味か」
「すまん、言い方が悪かった」
「本当のことだから気にしてないさ。逆に清々しい」
「会長のデザートに対する情熱はすごいな」
「ああ、昔お世話になったお婆さんからお菓子作りを教わって以来はまっているんだ。いずれあのレシピを再現したいと野望を抱いている。美味すぎて泣きながら食べたっけ……いい思い出だな」
「素晴らしい目標だ。できたらいいな」
ありがとう、と返事を返す会長。
お菓子づくりといえば俺のババ様も得意だったっけ。新しい食材やレシピを発見する度によく俺を実験台にしていたな。俺がよくお竜に振る舞っているドーナツがその系譜よ。砂糖まぶしたのが昔の人にとっては贅沢な御馳走なんだと。
「ところで神無月、彼方の件なんだが……バックアップするというがどういう計画なのか? そろそろ具体的な構想を聞かせてくれるかい?」
「それについてだ。期待してくれて悪いがそんなに深く考えていない。だから会長とよく話し合って今後の方針を決める。ただ俺の願望を押し付けても成功するとは限らないからな」
「なるほど、ヒアリングか。生徒会ぽくってよい」
「俺もコンサルティングみたいな専門知識はないからどんなアドバイスすれば的確なのか手探りだ。もしかしたらこれ以上関係が悪化するかもしれない。それでも構わないか?」
会長は静かに頷く。事前にラインで色々と基本情報はうかがっている。それでも齟齬があり後々揉める原因になるかもしれない。よって慎重に進める必要がある。
協力すると宣言した以上、遊び半分のいい加減なごっこ遊びをするつもりはないぜ。
「いいさ。どうせ僕じゃ終始受け身で己が望む展望を勝ち取るのは無理だ。なら君の賭けに乗るしかないよ。大切な彼方が誰かの物になるのは耐えられない」
「その覚悟受け取った」
相変わらず会長は美人だ。
隣で歩く俺が誇らしくなるぐらい輝いている。
この美貌で陽キャラでもなければ友達もいないとは詐欺だな。
あくまでも生徒会長だから敬われてるが基本的にはボッチ。孤高に咲く高嶺の胡蝶蘭など囁かれているけど、本心は皆と青春を謳歌したい。
無論異性から告白されたこともない。流星に曰く、名だたる陽キャラ男子達も迫力あるから怖気づくらしい。
こうした他人事と思えない親近感があるから会長に力を貸したいのかもしれないな。
こうして俺達は今後について話し合うことにする。
どういう行動を執るのか?
どういう展開を望むのか?
どういう結末が相応しいか?
会長の想いをあの甘ったれにぶつけて矯正しないと、マジで人間のクズになってしまう。その為に俺が出張って説教する覚悟もある。
「神無月よ、今日の分と成功報酬半分だ。前払いで受け取ってくれ」
「え?」
キス✕2。なんの前触れもなく会長は俺の頬に唇を押し当てる。今日はテンション高めなので唇の圧が強い。
「マンネリ化して申し訳ないがこのくらいで許してくれ」
「女王からの接吻、光栄の至り」
あのカリスマ女王にマンネリと言わすぐらい毎回キスをしてもらっている事実を知られれば、俺は学園男子から命を狙われるだろう。
「よしてくれ、僕なんて学園に何も貢献してないぞ」
「ふざけるな。教師どもが腐っている今、会長いなかったらこの学園はとっくに問題校だ」
「冗談でも嬉しいよ。そうだ、良かったら次の生徒会長に立候補してみないか? 僕が推薦する」
「気まぐれでもよしてくれ、俺じゃ誰も票入れてくれねぇよ。羞恥プレイは好きじゃない」
気持ちは嬉しいが、しかし人には得手不得手がある。カリスマが著しく欠落している時点でリーダーは向かない。
「やはり君は面白い奴だ。今日は気分がいいな」
「おい!」
会長にまた同じ所へキスされた。
「無制限になったからな。神無月をからかう戦略が増えた。実に喜ばしい」
「そんなのフリだと軽くみていたが案外厄介だ……」
俺は二度あることは三度あるから牽制して間合いを取る。
最近、人目がつくところでも平気で接吻してくるな……。自分が名門校の生徒会長だということ忘れてないか?
人の気も知らずに会長は面白がって邪悪な微笑みを浮かべていた。八月末までこれが続く現状に俺の胃はキリキリ痛む。
こうして取り引き第二ラウンドはキスと共に波乱の幕開けを迎えた。
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