N(ノーマル)レアの僕は今日も生き残りたい。

@odoneco_999

第1話 ゲーム開始


声が聞こえる、忘れたい現実から目を覚ましたくないのに、


目覚めが悪くなったのはいつからだっただろう、

頭が「まだ起きたくない」と叫ぶのを何かとか撫でながら、薄く目を開ける。


「ここは、どこだ」と思う。


割と自分は冷静であると、そこが自分の長所だと信じていた、

今この瞬間までは。


目の前に広がるのは、闘争と血と悪臭。

轟音、そこから、そう、そこから声が聞こえる。


「止めろ、止めてくれ死になく、、ゔああ、おあ、ぐふ」


そんなに、そんなにおかしいだろ、何なんだよおい、え、、、なんだよ。


背筋が凍る感覚が襲い、ただただ、頭がまだ寝ているんだと信じていた。


朝6:00に鳴る遠くに聞こえるアラームと一緒。


そんな聞きたくないような、現実に戻す声が聞こえる。


「いい加減にしろ、チビ、いつまで寝てるつもりだ」


野太い声、某プロレスラーのセリフのような、蝶○のような声が、


「聞こえているのか、そこのチビ」


見上げると鼻にほくろがある。


ほくろから毛が生えている。


ぼーっと数メートル先のその声の主のほくろにピントが合ってしまう。


「ぼーっとしてるんじゃねー、ぼやぼやしてると死ぬぞ。」


「え、あ、どこ、ここ」


「あぁ、お前少し前のこと忘れたのか。」


「いや、わからないです。すみません。」


「さっき、せつめ、ぐはっ」


赤色を見たことがあるだろうか、正しくは鮮血の赤だ。


急いでいる時にイライラする信号機の赤とは別、


右の首筋がパックリと割れて、赤が飛び出す。


ゆっくりと右から左へと筋が開いていく。


そう、ゆっくりとだ。

茹でたささみを引き裂くようにミシミシ音を立てているように感じる。


ドッ、落ちる。

目が合う。

血走った目が、口から出る液体が少し血が滲む。


何分経っただろうか、いや何秒なのか。


心臓の音がうるさい、BPMなんとかが流行りなんだろ。


違う、そんなこと考えているのは否定したいからだ。


あぁ、死んだんだ。

分かっていた。


簡単だなと、さっきから聞こえる声も同様なんだ。


右も左も後ろからも聞こえる。


込み上げる胃液か何かが、生を実感する。


さっき言われたことを思い出す。


「せつめ」まで言っていた。


せつめだと、説明なのでは、

説明とは、、、、。いや自分は知っている。

覚えている、

覚えている。


説明されたんだよ、この世界のこと、そして急にここに連れてこられたこと、


自分が叫びながら理解できずに、目の前が光ってそしたらここに居たんだと。


貧血を起こしそうになりながら、状況を理解しようとする。


でも待ってくれない。


奥から走ってくるのが見える。


視界に捉えていた影が大きくなって、こちらに近づいてくる。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


目が合う。


ドブ緑色のした酷く醜い顔がこちらを捉える。


赤黒く錆びついた剣先が鈍く光る。


十数メートルあった距離が、1秒また1秒と時間が過ぎる中で、

死が駆け寄ってくる。


先ほどもそうだ、声をかけてきたモノも、今近づくモノも人では無い。


形容し難く醜い顔をする鬼は、

自分が知っている言葉で例えるとゴブリン。


そう、RPGによく出てくる小鬼と書いてゴブリン。


小学生ぐらいの身長に手にはショートソードを持ち、

口からは涎を垂らしながら、目は獲物を捉えたと語っている。


この間4秒。


動かないと、うごけ、体、頼む。


足音が聞こえる、死ぬんだ、しぬ。


死にたくない、

意識した瞬間に込み上げてくる液体。


酸味はなぜか無い、気分の悪さだけで、自分が吐いたことに気がつく。


後ろへ後退する。


「あぁ」なんとも情けない、

最後の言葉が一言も出せず。


走りながらくるゴブリンの揺れた剣先を見ながら、目を開けるのを辞めた。


何秒経っただろうか、暗い。


「ゴボッ、ゴボボボ、ゴッ」


不思議と体は痛くない、ただ異物が体に入ってくる感覚。


そして不快な音が体から鳴る感覚。


死ぬ際には、もっと痛みと苦しみがあると思っていたがそうではないのか。


うっすらと目を開けてみる。


数十秒の暗闇でも光が眩しく感じる。


ピントが合い、踵を捉える。


「???」


どうゆうことだろう、ん。え?


冷静とは?分析とは?いやいや、できないだろぉぉぉ。


少し、後ろに下がりながらスヤスヤと眠っているようなゴブリンの顔を捉えたのは2分後の出来事だった。


口元に近づき、息をしているか確認する。


「死んでいる」


そう、某名探偵みたいな動作だ。


口元には、青い液体が付着しており辺りの草は荒れている。


少し後ろには、転んだような足を滑らせたような痕跡がある。


「これは殺人事件だ!」と意気揚々と叫ぶけれど、戦場の喧騒に消されていく。


犯人は、あなたです!と叫ばなかったのを褒めてほしい。


いや、簡単に言えば


自分の嘔吐物で足を滑らせてそのまま自分へダイブ!!、そして溺死した。


そう簡単なのだ、えぇ、自分にダイブして溺死した事実を認めれば。


先ほどから、目線がおかしかった。


小学生ぐらいの背のゴブリンを見上げていた。


歩いているよりは、動いている。


ぬるっと


忘れていた記憶が少しずつ思い出される。


自分は、青色の液体もとい、

僕はスライム、悪いスライムじゃないよになってしまったことを。


青天の霹靂とはこのことか、

数十年生きてきて初めて思う感情と共に、この感情が初めてじゃないと気づく。


「忘れていただけだ」あまりの事態の変わりように追い付かなかった思考と理性がヨチヨチと歩いてくる。


「そうか、自分は死んだんだ。」


「俺が殺ったぞーー」


ビクッとしてしまった。


遠くから声が聞こえる。


そこら中から雄叫びが聞こえる。


「おめでとうございます。」


また、ビクッとしてしまった。


先ほどとは違い頭の中から声が聞こえてくる。


「あなたは勝利しました。

MVP:バロク

報酬:EXP スキルスクロール 5000ベル

1分後にホームへ戻ります。」


スマホの音声案内のような一定のトーンで聞こえる女性の声。


最近のAIの方がもっと感情こもってるだろと思いつつ、目の前に表示される勝利の宣言。


報酬とは、バロクとは、ホームとは。。。


「そうか、現実なのか。分かってきたけど、嘘だと思っていたし、それこそ夢だろ。はぁ」


声が出てしまった。


「お前、生き残ったんだな。これは予想外だ」


後ろから、渋い40代の男性(イケボ)が聞こえる。


振り返ると、左目に傷を負った全長5メートルくらいの巨大な狼が座っていた。


「え、はい?」すっとんきょうな声を出したと思ったら、目の前が真っ白に。。。


船に乗っていた。

波で揺れている。

真っ白なのにわかる。


帰ってきたんだなと。


「あら、今回は思ったより残ったのね、おめでとう」


四角いルービックキューブが喋っていた。


鉄と土の匂いが鼻を掠めながら、


見上げた空には浮いていた、ルービックキューブが。


揃っていない色をくるくると回しながら、


聞こえてくるのは妖艶なお姉さんの声。


あぁ、やっぱり帰ってきたんだなと悟った。



ーーーーーーーー

インタビューメモ 01


狼族のバロウ


「あいつについて行くとは、最初は思っていなかったよ」


「なんて言うかな、そう頼りない、ワッハハハハ」


「最初の戦闘を後ろから見ていたんだけれども、まさか敵がゲロに足を滑らせて溺死とはな、傑作だよ」


「でも、目が合った時に不思議と悪いやつじゃないと思った、なんでだろうな」


「まぁ、今でも変わらない部分はあるけどな、でも直感だよ、狼の直感」



記者

「なんだか、とても仲が良さそうなんですね。」


バロウ

「ふざけたこと抜かすな。私は、自分の直感を信じただけだ。」


記者

「す、すみません、その、牙を抑えてもらえると。。」


バロウ

「すまない、脅かしてしまったな、だがあんな出来事が起きるとは、、、私も落ちぶれたな」


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