第3話 [現代編][3]-[俺]が轢かれて死ぬってマジ!?-

 そして、潤の手元に残ったものは、福澤諭吉が20枚と、スマホのみだった。


「ふざけんな!クソ親父!開けろよ!」


先程の状況と一変したのが、ようやく理解できたのか、潤は大声で叫んだ。


 その声は、虚しくこだまし、マンション一帯に反響する。


 だが、その扉が開く事は、二度とない。 


 「あのクソ親父。なにもそこまでしなくてもいいじゃねえかよ」


 潤は、まだ父親の気が変わるかもという希望にしがみついてみるが、現実は虚しく、やはり扉は開かない。  


「クソッ!何なんだよ!マジで!一人でやってくとか、マジ無理ゲーだわ」


 もはや、潤は開きなおったのか、諦めたのか分からないが、そう言葉を紡ぐ。


「住むとことかねーもんなー。アパートとかも多分、未成年だから借りれねーだろーし。借りれたとしても、20万じゃ全然足りねーだろーなー。家賃だけじゃねーだろーし。費用とか」


そして、潤の頭の中に、1つの考えが思いつく。


 「あー!もうネットカフェ暮らししか思いつかねー」


 そう考えを巡らすが、住む所はあっても、お金と風呂に入れないなーと踏みとどまる。あと服なども。


「ネカフェ住みながら、服とか買って風呂は、銭湯とかでいいや。バイトは、未成年でも雇ってくれんのかなー」


半ば諦めに近い考えだが、それしか無いと心に決め、歩みだす。


 東京の都心の一等地に住んでいる彼は、幼い頃からこの大都会の喧騒に慣れているせいか、地方から上京してくる人間に比べて、これと言って、他人の視線や重圧に飲まれることがない。


 というより、鈍感というのに近かった。


 それを自分でも自覚しているのか分からないが、歩いているときも気にせずスマホに夢中だ。


 そして、それのせいで横断歩道が赤なのも気にせず、そのまま歩き出す。


 瞬間、キキーッという自動車のブレーキ音と共に、潤の体は前方数メートル前に吹き飛んだ。


 「痛っ…」


 潤の体からは、血が滲みでて足と腕が折れてしまっていた。 


意識が朦朧(もうろう)としていくのが分かる。


薄れゆく意識の中で最後に見えたものは、家族との思い出だった。


「このまま死ぬんだろうな、俺」


そう言い残すと、彼は息を引き取った。





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