第2話[現代編][2]-俺がつまみ出されるって、まじ?-

「たっだいまーー」


そう口火を切ったのは、姉の遊であった。


姉の遊は、弟とは対照的な性格をしており、潤を陰キャとするならば、遊は、超陽キャであった。


母親もそれに続けて、口を開く。


「帰ったわ」


姉と、行動して気を使ってたのか、声色には疲労の色が見える。


その母親の声に続き遊の友人の小松里奈が口を開いた。


「ほえー、これはいいマンションに住んでおられますなー遊ちゃん?」


その彼女が、自分自身の眼鏡をクイッと上げながら言った。


里奈は、生粋のオタク女子であり世間一般で言う腐女子に分類される。


「おかえり、3人共」


父親が怒りを抑えるように言う。


「何かあったの?めっちゃ顔怖いよ?父さん」


姉の遊は、こう見えて人の感情を過敏に察知する能力に長けている。


「ああ。さっき潤と色々あってな。俺としては、こいつをこれ以上この家に置いておきたくないんだよ。だから、今から追い出す。」


そう力強く言い放つ。


その会話も、当の本人である潤は、聞く耳を持たず、今度は、ソシャゲに夢中だ。


「それは、さすがに可哀想だよ、父さん。潤の言い分も聞いてあげれば良くない?」


「こいつには、何言っても無駄だと思うがな?まあ聞いてやらん事もないが」


そう言うと、多田人志は潤に対して話しかけた。


「おい!潤!」


当の本人の潤は、イヤホンしながらゲームしてるせいで、聞こえてないようだ。


「おい!たまには俺の話を聞け!」


人志は、潤の耳に付いている、イヤホンを引っこ抜いた。


「何だよ?さっきから。何か俺に用あんの?俺は何も話す事ねーよ」


潤は、気の抜けた返事を人志に向けた。



「お前は、無くても俺からはあるんだよ。潤、お前これから先どうする

つもりなんだ?」


「え?どうするつもりかって?あー、俺さー将来的にやりたい仕事あんのよ。それが今やってるゲーム関係なんだよね。だからさ、こうやって毎日ゲームプレイして、色々と勉強してんだよねー」


「お前は、馬鹿か?そんなもの、高校から帰宅してからでも、出来る事じゃないのか?わざわざ引きこもってまでやることじゃないはずだ。もし、そういったゲーム関係に就職したいと考えてるなら、高校くらいは卒業しておけ。もし、その分野に就職が無理だったとしても高卒なら他の分野の就職先などでも多少マシなはずだ。まあ、俺としては、大学まで出て欲しいところだがな。今の時代、高卒でも就職が厳しいと聞く。今は中小企業などもそういった学歴で見る所が多いらしいぞ」



おそらく、正論を言っているのは父親の方だろう。


「あー!うるせーなー!そんな、ぐちぐち言われなくても分かってるよ。ほんと、しつけーなー」


「いや、お前は全然分かってない。もし分かってたなら、ニート等してない筈だ。本当にこの先このままでいる気なのか?もう1年以上この家でニートしてるんだぞ?まさか、この先ずっとこのままでいる気じゃないだろうな?もしその気なら、今すぐこの家から出ていけ。俺達も、お前に対してそこまで面倒を見てやる事は出来ない」


「 はあ?やーだねー。この生活超楽だもん。一生このままでもいいぐらいだわ。自分の趣味のゲームしながら、ニート出来るとか最高じゃね?」


父親の我慢もそろそろ限界に達してしまいそうだ。


「それが、お前の本音だな?」


かなり低いトーンで父親は、潤に問いかける。


「ああ!そうだよ。つー事で俺はゲームの途中だか...っ!」


瞬間、潤の襟を勢いよく引っ張り、もの凄い力で玄関まで引っ張っていく、父親の姿がそこにはあった。


「いてーって!やめろよ!親父!冗談だって。冗談!ちょっとふざけただけだって!許してくれって!」


潤の必死な懇願も、父親の人志の耳には届かない。


そして、開け放たれたドアまで引っ張っていき、人志は潤を思いっ切り投げ飛ばした。


「うわーっ!いてーっ!何すんだよ。マジで?やり過ぎだと思うんだけど?まさか、マジになるとは思わなかったわー」


「何が、マジになるだ。まさか、お前、俺がそんなにお人好しだと思っていたんじゃないだろうな?家族だから、少しは寛容に見てくれると踏んでいたんだろう?俺は、他の皆と違ってそこまで甘くない。今日限りだ。明日から、お前一人で生きていけ。どこに住もうと自由にしろ。だがな、最後に一つ忠告しておいてやる。絶対にこの家に帰ってくるな。もし、帰ってくる事があったなら、俺は容赦しない」


そう言うと、父親の人志は、自分の財布から20万円を取り出した。


「これで、どこへでも行け。まあ、まずこの金だけではもたないだろうな。お前の事だから、もって数日がいいところだろう。後は、自分自身で考えて生きていく事だな」


そう言い終わると、父親は勢いよく、玄関の扉を閉めた。









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