魔女の夫にはなりたくない!
こふゆ
プロローグ
夜は徐々に明るさを帯び、太陽を向かい入れようとしている。
しかし、時折吊るされている寂れたランタンの光だけが頼りな路地裏から見てすれば、それは関係のないこと。
時間感覚を忘れ、朝まで飲んだくれたであろう酔っぱらいが道を闊歩…いや、ヨタヨタと、壁にぶつかり、転げそうになりながらも徘徊していた。
「…っ?!」
刹那、酔っぱらいは見てしまった。
光の差し込む、路地裏の奥の奥に見える、出口とも入り口とも見て取れるようなその世界の境目が。
いや、その先に見える、『紳士と淑女』(リア充)の姿が。
「愛してるわ、ダーリン」
「俺もさ、マイハニー」
服は少しはだけていて、肌も遠目でも汗ばんでいるように感じられた。
(朝チュン…!?)
2人の唇は徐々に近づき、空間は熱を帯び始める。
嗚呼、忘却魔法の一つでもあれば…いや、そもそも解毒魔法で酔いから覚めることができれば、こんな場面に出くわす前に、1人寂しく家に帰れただろうに…
「いや、1人寂しく家に帰るのが嫌だから解毒魔法を使ってないんだよ!!!」
本末転倒である!という声が路地裏に響いた。
空間が揺れ、驚いたようにネズミや虫が道を這う。
「…もういい、アッタマ来た!」
酔っぱらい、もとい魔女は振り返り、時間感覚のないその空間の奥へと、その道を闊歩して進む。
そして先ほどとは違うところで道を曲がり、曲がり、階段を下り、また進み…と、繰り返して、古臭いドアを蹴破る。
ドアの古臭さに反し、中は思ったよりも豪勢で綺麗な見た目をしている。
しかし、それはどこか胡散臭さも覚えており、ろうそくの火が怪しく揺れているように見えた。
「あ、あなたは…」
同様にこぎれいな見た目をしている、その店のオーナーであろう存在が目を見開き、口を開く。
しかし、その言葉を発する前に、魔女の声が店に木霊した。
「ここからここまで、全部ください!」
とある大きな王国の街のその地下に潜む、奴隷を取り扱う、奴隷専門店。
そんな場所に、国家から認められている、超がつくほどド級な戦闘力を保持している魔女が現れる。
「いずれは、私の婿に…」
そうして9人の奴隷の人生は、大きく揺れ動くこととなる…
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