38話氷月凛堂の過去に真田魁斗は居た
私は、幼少の頃から大事な部分が欠如していた。
それは喜怒哀楽だったり常識だったり。
悪口を言われても親に厳しく叱られた事もあるが
何も感じなかった、あるのは今怒られているなと言う現状の理解だけだった。
親に躾けと言われて食事を抜かれた事もあるが
何も思わなかった。
死ぬ事に恐怖を感じなかった、だから欠如している。私は、神様の失敗作らしい。
確かに人間としての大事な部分が欠如している私は
失敗作なんだろう。
私は、誰かに必要とされる事が生き甲斐だったのだろう、今川恵梨香に必要とされた時そう思った。
別にいい、必要とされるだけマシだと思う。
今川恵梨香は、私に言った。
妨害をしろと、真田魁斗を追い出せと。
幼少の頃の記憶が蘇る。
親に捨てられた事を………何故?
疑問しか浮かばなかった、私は頑張ったのに。
今は祖父母の所でお世話になっているが、もう既に私に喜怒哀楽は、なかった。
今の私にあるのは、追い出せと言う命令のみ。
必要とされたい、私にも能力はあるんだと言われたい。だから、顔も知らない少年を学園から追放
する、私はお人形で構わない。
だから、人の言われたことを遂行するだけ。
「私を殴っても解決しない。
彼女を止めたいなら彼女を止めるしかない。
私を殴っても流せる情報は全て流した、これ以上行動するつもりは、私にはない。」
これは、本心だ、もう全て流した。
だから、本を読んでいた。
この件に関わることはもうない。
「ふむ、確かにそうなのかも知れないがね、
君に情報を提供してもらいたい。」
なるほど、今川恵梨香の事を知りたいのか。
「それは、不可能。
私の知ってる事は、皆が知ってる。
それに…………そう簡単に知ってても情報を吐くつもりもない。」
「君は、何か知ってるんだろ?!
だから誤魔化そうとするんだな!」
はぁ…………
「言った筈………私は、何も知らない。
殴って確かめる?」
「そのつもりだ!」
「はぁ………用が済んだら帰って。」
ドゴン
私と黒髪の子が話していた時大きな音が響いた。
「何の音。」
「君達の仕業じゃないのか?」
「………私は、知らない。
向こうに行った方がいい、私はともかく他の人達は何をするか分からないから。」
「チッ、行こう、ここよりも向こうの方が気になる。」
急いで扉に向かっていた暴力的な少女のスマホが落ちた、そして待ち受け画面を見て言葉を失った。
あり………えない。
「な……何でその子が?」
意味が分からなかった、何故あの時唯一私に手を差し伸べてくれた男の子が居る?
私は、家出をした事があった。
その時にこの写真の子と出会った、見間違えな筈がない、確かに成長しているけれど面影がある。
私にお菓子の味を教えてくれた、私に遊びを教えてくれた、彼との時間程楽しかった思い出はない。
そう………楽しかったのだ、彼との時間は。
「あ……あ……」
言葉が出て来ない、彼は、この学園に居たのだ。
「ん?おい、早く返せ!
魁斗に危険があったらどうする!」
魁斗……魁斗……魁斗………魁斗
真田……魁斗、そんな事があるのか。
「その子が……魁斗?」
「それが何だ!」
そうなんだ、彼とはもう出会えないと思っていた。
私が家出したのは、彼のせいだと親に叱りつけた私の母。彼は、両親に怒鳴りつけられていた。
平手打ちをされていた。
私の責任だと自分を恨んだ。
私が関わると誰かが不幸になるのだ。
でも……彼は、笑顔で言ったのだ。
「君の笑顔は、世界で……………一番。
ずっと…………笑っていて。」
「何だ?」
あ………そうだ……私は、言われたんだ。
「笑顔………笑えないよ。」
今の私にはもう。
そうなんだ……君は今も人の為に何かを成すんだね。
「…………私の知ってる情報。
今川恵梨香は、体育館に居る」
「何故、急に教える気になったのか聞いても
いいかい?」
「その子が私の知り合いだから。
私は、その子に恩がある。」
「アハハ、なるほどね。
またしても彼に救われたと言うことか。
後そんなに睨まなくてもいいよ。
彼に恋人は、まだ居ないよ」
私が睨んだ?私に感情はない。
でも……この胸のモヤモヤは何だろう。
「私も行く。」
「君が?また、私達のじゃ「貴方達は、どうでもいい。」
「私は彼に会いたい。」
「なるほど。分かった、では、行こうか。」
「いいのか?」
「あぁ……彼の味方だと言うなら信用できる。」
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