28話 嵐雲南雲とは?
私、南雲には、家族が居たが避けられていた。
あまり表情豊かでもない癖に時々急に笑顔を見せる。それが、不気味だと言う。
何かに取り憑かれているんじゃないかと
お寺でお祓いをした、結果は、当然変わらなかった。当たり前だ。これは、素だから。
だから、尚更不気味に映ったんだろう。
部屋から出るなと言われた。
それからは、一人でご飯を食べる様になった。
とても寂しいが仕方ないと思った。
私は、不気味な子供だったから。
私は、桜岳デシィプリンド学園に入学が決まった。
そのまま、逃げるように一人暮らしを始めた。
家族は、とても喜んでいたのを知っていた。
じゃあ何で私を産んだんだろう?
誰も好いてくれない私に価値なんてあるんだろう。
バイトを始めた。コンビニの店員さんになった。
表情が暗いと怒られた。
お客様に目が気に入らないと水をかけられた。
私は、深く頭を下げたけど態度が気に入らないと
言われ店長を呼ばれた。私は、叱られた。
バイトの後輩さんに告白?された。
でも、その後輩の事があまり好きでは、なかった。
私の胸ばかりいつも見ていたのを知っている。
確かに同年代で私より胸の大きな子を見たことは、
ないけど。あまり、好きでもない相手に胸を凝視されいい気分になる人は、居ないだろう。
この人が好きなのは、私じゃなく胸なのだ。
だから、断った。
バイトの後輩さんが自分のミスを私に擦り付けた。
嘘をついたと言われクビにされた。
その時、後輩さんは、私にこう言った。
あんたの価値は、その無駄にでかい胸しかないと。
気持ちの悪い笑みを浮かべていた。
でも、バイトをしないと暮らせない。
だから、バイトを探し続けた。
数カ所の面接を受けてやっと受かった。
でも、男の子は、やっぱり胸を見る。
女の子は、嫉妬で陰口を言い合う。
どうして私が生まれたのか分からなくなっていた。
そんな時捨て猫を拾った。初めての家族が出来た。
私は、その子の為にもバイトを頑張った。
私に休みは、なかったけど、その子さえ入れば
頑張れた。その子だけが家族だった。
ある時学校である男の子を見つけた。
最初は、興味何てなかった。
ううん。他の男の子の様に距離を取っていた。
だけど、ある映像が脳内でフラッシュバックした。
意味が分からなくて、急な頭痛で倒れそうになった。
だから、教師に伝えて保健室で休む事にした。
けれど、頭痛が治まることは、なかった。
その後も時々変な映像がフラッシュバックする。
その、映像の中には、見覚えのない男の子が居た。
映像に出て来る少年。
君は、何なの、どうして私の頭の中に出て来るの?
私が何度問いかけても答える事は、なかった。
当たり前だ、これは、映像なんだから。
でも、今日のは、いつものと違った。
急に頭が痛くは、ならなかった。
…………夢に出て来たのだ。
今度は、起きてる時ではなく夢に。
初めてだった、少年が夢に出て来るのは。
でも……いつもの映像は、何だが楽しそうで
家族を後から温かい眼差しで見つめていた。
クリスマスの日………寝ている妹さん?にプレゼントを置いていた。
妹さんが家族に聞いた、誰がくれたのかって。
親は、自分が置いたプレゼントの事を言っているのかと勘違いして頷いた。
彼は、それを見ても特に気にする事は、なかった。
母の日………花束を送った。
母は、父親が酔った勢いで買ったと勘違いした。
とても喜んでいた。それを見て不満に思う所か
少しだけ、家族を幸せそうに見ていた。
今………目の前では、血塗れの少年が壁にもたれかかりぐったりしていた。
何が起こったのか分からなかった。
脳が理解するのを拒んでいた。
少年は、いつも家族を幸せそうな笑顔で見つめていた。こっちまで暖かくしてくれる様な……そんな
優しい目だった。
今の少年には、暖かさを感じなかった。
どこまでも冷たくて、瞳に色がなかった。
妹さん?が少年の頭を抱いて膝をついて嗚咽を漏らしながら泣いていた。
何故かは、知らないがこの少年の気持ちが理解
出来た……だから分かる。
少年が家族には、好かれて居ないと思って居た事も、ずっと一人で考えて苦しんでいた事も。
それでもあんな風に幸せそうに家族を見つめていた。
少年は、気付いていなかったのだ。
私も気付かなかった。
家族は。妹さんや母は、気付いていたのだ。
彼がプレゼントをした事も。
自分達が本当は、愛されて居た事も。
だから、こんなに泣いている。
何事かと両親が出て来た。
父親は、膝をつき大粒の涙を流している。
母親は、泣き崩れていた。
だけど、これは事故何かじゃなかった。
私は、映像で確かに見たのだ。
子供が悪戯で子猫を道路に放り投げた所を。
少年を殺したのは、子供達だ。
そんなの……家族が知る事は、ないだろう。
少年は、確かにその場に居たのだ。
少年が知らない訳がない。
でも……少年の心には、まだ、暖かさがあった。
どうしても信じられなかった。
けれど、これが現実だった。
少年は、子供達を恨む事は、なかった。
最後は、今まで素直になれなかったのを
悔やむ様にとびっきりの笑顔で妹さん?の
誕生日を祝った。
そして、ずっと家族の幸せを願って逝った。
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