第7話 『六本木ヒルズ最上階の復讐劇』 ⑧「新たな女王」


2年後、2028年春。


「本日、高橋結衣が、グローバルテックグループCEOに就任いたしました」


帝国ホテルの大宴会場に、財界の重鎮たちが勢揃いしていた。フラッシュが焚かれ、世界中のメディアが注目する中、私は壇上に立った。


スタンフォードMBAを首席で卒業。在学中に立ち上げたAIベンチャーは、Googleに200億円で買収された。その実績を引っ提げての帰国だった。


「32歳での就任は、日本の上場企業史上最年少です」司会者がアナウンスした。


私は深紅のスーツに身を包み、マイクを握った。


「私には忘れられない言葉があります」


会場が静まり返った。


「5年前、私は『飾り』と呼ばれました。誰かのステータスを上げるためだけの、価値のない存在だと」


記者たちがざわめいた。その story は、もう伝説になっていた。


「でも、その経験が私を強くしました。飾りと呼ばれた悔しさが、私を世界へ導いた。今、私は誰の飾りでもない。私自身の人生の主役です」


スタンディングオベーション。拍手が5分間鳴り止まなかった。


「そして今日、特別な発表があります」


私は振り返り、スクリーンを指した。


『グローバルテック新本社 六本木ヒルズ最上階』


「かつて、私が飾りとして住んでいた場所を、新しい本社として買い取りました。あの場所から、日本のIT業界の未来を創造します」


会見後、私は六本木ヒルズ最上階へ向かった。


かつてのリビングは、最新鋭のエグゼクティブオフィスに生まれ変わっていた。


「CEO、TIME誌から連絡です」


秘書が駆け寄ってきた。


「『世界で最も影響力のある100人』に選出されました!」


「ありがとう」


私は窓際に立ち、東京を見下ろした。この景色を、今度は自分の力で手に入れた。


その頃——。


群馬県の田舎町、小さなPC教室。


「藤原先生、これで合ってますか?」


高校生が質問してきた。藤原翔太、40歳。時給1000円のアルバイト講師が、疲れた顔で答える。


「ああ、そうだね。よくできてる」


髪は白髪交じり、安物のポロシャツにジーンズ。かつての面影はない。


「先生、昔東京にいたんですか?」


別の生徒が聞いてきた。


「まあ、少しね」


「有名な人だったんですか?」


翔太は力なく笑った。


「いや、誰でもない。ただの人だよ」


休憩時間、翔太は職員室でカップラーメンをすすっていた。月収16万円。アパートの家賃4万円を払うのがやっと。


テレビをつけると、私の就任会見が流れていた。


『グローバルテック高橋CEO、TIME誌の100人に』


画面の中の私は、輝いていた。世界中のメディアが「日本の女性リーダーの象徴」と称賛している。


「高橋結衣……」


翔太は画面を見つめた。かつて「飾り」と呼んだ女性が、今や日本経済を動かす存在になっている。


「藤原先生、授業の時間ですよ」


事務員の声で我に返った。翔太は重い腰を上げた。


一方、香織は風俗で働いていたが、性病を患い、それも辞めざるを得なくなった。今は生活保護を受けながら、ワンルームアパートで引きこもっている。SNSには、もう何も投稿していない。


夜、私は最上階のオフィスで、父とディナーをとっていた。


「結衣、見事だった」父が微笑んだ。「お前は私を超えた」


「パパのおかげよ」


「いや、お前自身の力だ。飾りから女王へ。見事な変身だった」


窓の外には、東京タワーが輝いている。


「翔太は今、群馬にいるそうよ」私は言った。「PC教室の講師」


「因果応報だな」


「恨んでると思う?」


「恨む資格はない。自分で選んだ結果だ」


私はワインを一口飲んだ。


5年前、この場所で「飾り」と呼ばれた。

今、同じ場所で、私は女王として君臨している。


新聞の一面を飾る私の写真。

そこには、こう書かれていた。


『新時代の女帝、高橋結衣の時代が始まる』


物語は、ここで終わる。

いや、私の本当の物語は、ここから始まる。


【完】

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90秒でざまあ!サレ妻逆転ストーリーズ ソコニ @mi33x

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