2005年 8月


 始まりは、日本 【小笠原諸島】を中心として、測定不能の超巨大地震が発生する。津波が本土を飲み込み、数多の人間が死亡した。だが、被害はそれだけでは無かった。空を穿つ、大噴火が日本のみならず、周辺諸国にまで襲い掛かる。都市は崩落。瞬く間にマグマに呑まれ、滅亡の時を誰もが自覚した。


 大噴火は、日本だけではなかった。世界各地に存在する火山が噴火し、瞬く間に文明を呑み込み、数える事も出来ない数の人間が焼けた。


 密集した人間たちは他者を蹴落としながら、逃げ場を探し、安全な場所を探した。


 占い師達は導いた。誰よりも先に世界の危機を知った彼らは誰よりも先に、その地に入り準備していたのだ。


 それから、一か月して、世界は大きく様相を変えた。


 人間が住んでいた凡そ9割の場所が崩壊。電子機器、文明、象徴、あらゆるものを失い、全ての人間、国籍、人種問わず一つの場所に集まった。残された文明の利器を活かし、生き残った者達は知恵を出し合い、それぞれが手を取り合った。


 噴火の鎮静化を確認したのは、それから半年が過ぎた頃だった。


 残された科学者達はヘリを飛ばした。目指すは、最初の噴火地点。


 小笠原諸島。


 冷えたマグマによって作られた黒い土地に、ヘリが降りた。山は砕け、森は呑まれ、平らな土地となりながらも、未だマグマはボコボコと湧き、海に流れて大地を広げている。誰もが、降り立つ前にはその存在に気付いていた。


 マグマの中心、黒い球体が浮いている。


 その形状から誰もが連想した物を、そのまま口にした。


「卵?」


 まるで、その言葉がトリガーを引いたかのような、最悪のタイミング。パキッ、と分厚い殻に罅が入った。すると、割れた罅から10本の指が差し込まれ、中から殻が破られたのだ。


 それは、【人型】をした謎の生物だった。

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