第3話 俺弱すぎじゃない?

(やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい)


魔力の最大値がなぜか全然上がらなかった。


(RTAではこんなこと一度もなかったけど、ゲーム世界と全く同じではないってことなのか?本番の悪魔さんは怖いな)


足りない分はどこかでリカバリーを考えておかないとな。


そんなことを考えながら俺は毎日の日課を行う場所にやってきた。

日課というのは師匠からの訓練を受けるというもの。


この世界では幼い頃から戦闘訓練を受けて格闘術などを身につけるのが一般的である。


で俺の師匠というのはレオナルド。略称レオだ。


「よし、今日も集まったな」


レオは集まった門下生を見ながら満足気に頷いた。


「さて、今日の練習に入る前に一つ報告がある」


(それにしてもやばい。魔法の訓練が遅れてる。余計な話をするな。はやく剣の訓練に入れ)


「未明近くの森の中で大量のスライムが倒された形跡が発見された」


(なんだそんなことか。はやくしろ。終われ)


「全てのスライムが的確に弱点を二回突かれて倒されていた。これは【ダブルウィーク】という高等技術。できる人間には話を聞いてみたが全員知らないそうだ」


(やばい。魔力値がやばい。頼むから早く訓練に入ってくれ)


「私から言いたいことは一つだけ。森の中は危険だ。ひとりで入るのはやめなさい」


「「「はーい」」」


弟子たちはそう言ったがひとりだけ反応が違うやつがいた。


「はっ。ビビり共が」


(やばいやばい魔力)


「そのスライムを倒したってのは実は俺なんだよ」


そいつには見覚えがあった。


(カイル)


原作だとなんやなんやいろいろあって俺に絡んでくる雑魚悪役だ。

どんなことがあって絡んできたのかは忘れたけど要するに絡んでくるやつ。


「俺の雷魔法で奴ら全員ビリビリさ」


「カイル、本当にお前なのか?ふむ。名門の出身のお前ならできるのか?」


「もちろん。俺は将来冒険者希望だからな。スライムごときにビビらねぇよ」


「だがな、カイル。お前はまだ修行中の身だ」


「心配ねぇって」


そこで俺はスっと手を挙げた。


「あのーすんません。まだ時間かかりそうっすか?」


全員の目が俺に集まる。


「カイルの命の心配なんてどうでもいいんすけど、早く始めないっすか?訓練」


「てめっ!」


カイルが俺の胸ぐらを掴もうとしたが、俺はそれを避けた。

カイルは勢い余って前のめりに転けた。


「おぉ、すげぇ」


「今の不意打ち避けるなんて」


「あいつ誰だっけ?」


「レイなんとかだよ」


「レイなんとかすげぇ」


そんな声が聞こえてきた。

完全にアウェイになったカイル。


「てめぇ、レイなんとか!」


「黙ってくんない?早く訓練始めたいんだけど」


訂正しよう。

さっきカイルがなんで絡んでくるようになったのか分からないって言ったけど、俺が恥書かせたからじゃないかな。

逆恨みなんて迷惑なもんだな。


「覚えとけよ!てめぇ!」


どうせこいつとは因縁の仲になるしとっとと関係は悪化させておきましょう。


それはそうとここでコイツに恥かかせたことは忘れよう。脳の容量の無駄です。


さっそく訓練が始まることになる。

ちなみにここの訓練は単純明快。

ペアを組んでひたすら模擬試合をして、実践していく、というもの。


で、俺のペアなんだが……


いつも声掛けているやつに声かけよう。原作でも俺と組んでたやつ。


「なぁ、やらないか?」


「あ、あはは……ご、ごめん。、俺ちょっと」


そいつは俺の後ろをを見てそう言っていた。

はて、何かあるかなと思って振り返ると。


「俺とやろうぜ、レイナス」


「お前か、カイル」


「ボコボコにしてやる」


俺は指を三本立てた。


「なんの真似だ?」


「お前は3秒で十分かな。相手にならないよ」


「このぉ!!!」


カイルは剣を振りぬいた。


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