第4話 俺はまだまだ弱い
カイルの抜刀で戦闘が始まった。
「これはいいのか?師匠?反則ではないのか?」
「煽ったのは君だし、君はその不意打ちを受け止めてるじゃないか。止める必要がないように見えるが?(にやにや)」
俺はカイルの一撃を防いでいた。
ゲーム通りの一撃なため受け止めるのは容易である。
しかし
(ゲーム世界より一撃が重い気がする。俺のステータスのせいか?)
今回はたまたま受け止められたと思う方がいいかもしれない。
(カイルなんていう雑魚に苦戦するようでは俺はまだまだ弱いな)
剣をパンと弾いて距離を取らせた。
「レイナス。てめぇ口は達者なようだが、次は受け止められないみたいだな?!手が震えてたぜ?!」
「次?必要ないよ(俺の最後の一手はもう決まったから)」
「あ゛あ゛ん?!俺の一撃を避けるのか?!無理無理!次は叩き込んでやる!」
突っ込んでくるカイル。
「無理だっ……て……」
しかし、その勢いは失速してカイルは前のめりに倒れた。
さっきと同じように。
「な、なんで……」
「言っただろ?3秒で十分だって」
「チーン(ガクリ)」
カイルは白目を向いて倒れた。
周りからは歓声。
「すげぇぇ!!!」
「なんだよ!今の!」
盛り上がっていたが師匠が全員を黙らせると俺の前に歩いてきた。
「驚いたな。今のは……」
「剣を弾いた時に首筋を叩いただけですよ。倒れるまでにラグがあるんですけどね」
原作でも使えた技だ。
でこの技を使うと相手が戦闘不能になって暇になるので。
「あとの時間は好きに使ってていいですか?」
「あ、あぁ、もちろん」
剣の方も魔法と同じように素振りをすることでレベルが上がる。
(とにかく時間が足りない。レベルも足りないし1秒も無駄には出来んな)
◇
「はぁ……はぁ」
素振りを何時間も行っていた。
既にほかの門下生たちは帰っていたが、レオだけは俺の素振りを最後まで見守ってくれていた。
(クソッ、どうなってる?現在の剣術レベルが2?低すぎるっ!チャート通りに進めばこの段階で3はなってるのに)
どこかで魔力値のリカバリーを考えていたが、そんな暇は無いな。
剣術の成長も遅れている。
「レイナス。もうやめてはどうだ?疲れただろう」
「いや、まだ続けます」
「まだってお前……何時間やったと思ってるんだ?」
「時間なんて関係ないんです。大事なのは数字です。結果なんです」
「ゴクリ……」
「こんなところでやめられない」
俺は更に素振りを続ける。
何度も何度も。
(早くレベル3にならないと)
チャートがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!完全にリカバリーできなくなるぅぅぅぅぅぅ!!!
…
……
家に帰ってきた。ミーナが出迎えてくれた。
(レベルはなんとかぎりぎり上がったけどチャートに乱れが出始めた)
原作のチャートだともう少し余裕があったけどな。
「お疲れ様です坊っちゃま。聞きましたよあのカイル様に勝利されたと」
「ん?カイル?」
「はい。カイル様と言いますとこの辺りでは有名な剣の名門出身ですものね。その方に勝利なさるなんて流石という他ありません」
(そんな設定だっけ?)
カイルくんは原作でも3秒で撃破できるくらいの雑魚なので細かい設定は覚えていないんだけど、まぁそういうものなのだろう。
「ご飯できてますよ。それともお風呂にしますか?それとも……3つ目の選択肢いきますか?」
「修行だ」
「え?まだやるんですか?」
「離れを解放しておいてくれ。予定に少し狂いが出てる」
「予定……?」
「息付く暇も休息する暇もない。1秒も無駄にできない」
「え?で、でもあのカイル様を撃破したんでは?」
「俺はまだスタートラインにすら立ててない」
ミーナは俺の剣幕に押されたようだ。
「わ、分かりました。準備を済ませておきます」
さぁ、遅れを取り戻さないとな。
素振りを再開。
「ふっ!はっ!」
そうしていると……離れの扉が開いた。
顔を見ることもなく口を開く。
「離れには誰も近付けさせるなと言ったはずだが」
振り返る。
そこにいたのは予想だにしない人物であった。
「おぼっちゃま。僭越ながらこのセバスめがお相手いたしましょうか?」
(なんだこの展開。知らないぞ)
俺がこの世界に来たことで少しずつ展開に変化が出ているのだろうか?
この世界は俺の知らない展開が少し多いようだな。
気を引き締めないと。
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