第3話 下僕

 ジャンヌが軍議においてカンペを朗読しているころ、魔女はある軍人を呼び出していた。


「少し遅いわね。」


「はっ...。大変申し訳ありません、ご主人様。ですが...私も指揮官という...。」


「しゃべっていいなんて私が許可したかしら?」


「たいへ...。ぶふぉ。」


 土下座していた軍人が口を開こうとした瞬間、軍人は魔女により蹴り飛ばされる。

 この軍人の名は、ジル・ド・レ。

 百年戦争において、ジャンヌ・ダルクの監視役として派遣され、後にジャンヌ・ダルクとともに勇戦。しかしながら、百年戦争の終盤には輝かしい活躍と打って変わって精神に異常をきたし、悲しい結末を迎える。

 元々、若い頃悪行を重ねている人物でもあり、実際の所、晩年のジルは異常をきたしていたのかジャンヌ・ダルクが火刑に処されたことにより歯止めがなくなったのかは不明である。

 また、シャルル・ペローの『青髯』のモチーフになったともされるが、ジルが晩年に行ったとされるのは黒魔術の召喚の為の少年誘拐であり、ペロー版の『青髯』では6人の前妻の殺害である。シャルル・ペローがフランス人であるとはいえ、この童話が1697年に成立していることから、フランスと対外的な関係の良くない国の国王であり、6人の妻と離婚と婚姻を繰り返したイングランド王のヘンリー8世がモデルの方が妥当だろう。


「はぁ~。なんでこいつは殴ると忽然としてるのかしら?」


 魔女はジルを見下ろす。

 普通の軍人であれば、「女ごときが何を見下してんだ!」となるところであるが、そもそも...


「ありがとうございます。ありがとうございます。このような卑しい豚にご褒美を下さって。」


「キッッモ。」


「ブヒィィィィ。」


 ジル・ド・レ。

 歴史には男として記録されているが、本来のジルは女であった。

 しかも、ショタコンドMの男装?女性軍人であった。とはいえ、男装とはいっても髪を切ったりして男性のふりをしているのではなく、ジャンヌと似たような感じで魔術で他の人間から男性に見えるようにしているだけである。(ジャンヌの場合は、髪を短く切っているように周辺には見えている)


 魔女とジャンヌは一瞬で看破。

 それを餌に彼女を脅す予定であったが逆にその状況に興奮するなど、世間知らずなジャンヌですらドン引く程にやばいやつであった。


「ぶ...ブヒっ。」


「うるさいわね。少しでも使えるかもと思った私が恨めしいわ。」


 四つん這いになり人間椅子となっていたジルに魔女は腰掛ける。

(魔術が使えるやつが一般人にいるなんて...って思った私が本当に恨めしいわ。性欲のまんまにしか使えない変態だし...。変身魔術の使用者ってなかなか見つかるものじゃないから欲しいかと言われたら欲しいんだけど...。)


「ねぇ?下僕?」


「ブヒっ。」


「...。(汚物を見るような目)」



「...。(忽然とした表情)」


「魔女の情報は集まった?」


「ブヒっ!」


「...。(汚物を見るような目)」


「...。(忽然とした表情)」


「...。早く言って。」


「...。(忽然とし...切り替えた)。ブ...、オルレアンにいるのは魔女の一人という事は分かっています。そ、ブヒ、して、それも色持ち。」


「えぇ。それは知っているわ。」


 ジルから得られた情報ははじめから魔女は知っている。

 シノンに居る地点でその情報はから入手していた。


「他にあるんでしょう?」


「bu...他に異国の剣士を連れているとの事なのです。」


「剣士?」


「無...東方の出身ではないかと...。ただ、オルレアンにいたアクレシア家のものからはそのようなものはいなかった聞いているんですが...。情報が錯綜していて...。それに加えて、色についての情報は何も。意図的に隠されているかと...。」


「ふ~ん。」


(剣士...。使い魔ではなさそうね...。現実の武器を使用する魔法はあっても武器そのものが魔法のものはない...。あり得るとしたらだけど...。魔女同士が協力するはずもないし。)


「後、件の魔女はイングランドが雇い入れ...。」


 魔女は咄嗟に何かを言おうとしたジルを投げ飛ばし、自身も左に飛ぶ。


「ちっ。外したか。めんどいからさっさと終わらせようと思ったのによ。」


 赤い髪の魔女


「まだ、出てくるの早すぎじゃないかしら。"ロッソ”。」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

おまけ 魔女の質問コーナー

ジャンヌ「質問です。」

魔女「突然何よ。」

ジャンヌ「魔法って何ですか?」

魔女「そうね。魔法は...神秘の力よ!」

ジャンヌ「おぉ...。で、なんなんですか?」

魔女「私達しか使えない特別な力よ。」

ジャンヌ「でも、子どもが使えるとも限らないんですよね?」

魔女「...。(ピキピキ)。神をも殺せる力よ。」

ジャンヌ「ひっ...。」


ジル・ド・レ(真面目)「魔法とは神代の時代の産物です。魔術や錬金術といった現在使用されている占星術の原型となったものです。え?もっと詳しいの?これくらいしか分かりませんよ。

 占星術の特殊例として、存在する“固有式”と呼ばれるものと同じですね。ただし、魔法の方が圧倒的に強力です。簡単にいえば

・魔法(原型/一人一人違う)>占星術(劣化版/使おうと思えばみんな使える)

・魔法(強化版に近い)≒固有式(劣化版に近い/個人のもの・遺伝する場合あり)

・占星術>“固有式”(何かしらの力が働き変質)

といった感じになるのでしょうか。実際は呪術や神術、魔剣、聖剣、妖刀といった様々なものがあるのでこのように簡単な話ではないのですね。魔女を私のような一般占星術師が殺してしまう場合もありますからね。まぁ、私はやったことないんですけどね。昔話とかはそれが元になっているとも聞いたりしますね。

 えっ?魔法や占星術はどうやって発動するのか?

 それは次回のお楽しみですね。それに話しすぎたみたいですね。それではまたいつか会いましょう。(本編で会えるかは分かりませんがね...。)」





 

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