シュレーディンガーの猫?

 学校帰りに、キャチャポンっていう、猫のフィギュアが出るガシャポンを回してみた。でも、カプセルの中身は猫じゃなくて、大きな箱。上に蓋があるのと、側面に小さい穴があった。覗いてみると、黄色のまん丸な目がこちらを見てまたたいた。

 もしかして、と思って僕が蓋を開けて確かめたら、ずんぐりした、濃いグレーの猫が飛び出た。やっぱり本物だ!ずっと猫が飼いたかった僕は、夢中で猫と遊んだ。

おさむ、うるさい!」

 隣の部屋からあかりお姉ちゃんの声が飛んできた。僕が急ぎ猫を抱き上げたら、猫はもっと遊びたいと言わんばかりに、にゃうにゃう鳴いた。

「ちょっと!また何か拾ってきたの!?」

 僕の家はペット禁止のマンション。一回、捨て猫をこっそり家に連れ込んだら、お姉ちゃんがお母さんにチクってバレた。お姉ちゃんは帰る家の無い猫が可哀そうってこれっぽっちも思ってないんだ!

 ドアが開く音がして、僕はとっさに、段ボールに覆いかぶさった。

「それ何?」

「……学校で作った工作。」

「怪しい!何か隠してるんでしょ!」

「違うってば!」

「ちょっと二人とも、何喧嘩してるの!」

 怒ってお母さんが入って来た時、僕はお姉ちゃんに段ボールから引きはがされ、そ段ボールをひっくり返された。もう終わりだ!

「え、嘘、ホントに―」

「明!修のもの壊しちゃ駄目でしょ!」

 びっくりして僕が振り返ると、そこには紙粘土で作った猫とエサの皿、キャットタワーなどが転がっていた。段ボールの裏には、リビングらしき絵が描いてある。

「だ、だって修がなんか隠すし―」

「言い訳しない!」

 お姉ちゃんが説教される横で、僕は猫の人形を拾い上げる。さっきまで居た猫と同じ色だ。猫が見つからなくてほっとしたけど、もう会えないのかも。そう思うと寂しかった。

 

 ところがその日の夜、箱を覗いたら猫はちゃんといた。僕は飛び上がるほど嬉しかったけど、もっとびっくりする事に気付いた。箱の中にあった紙粘土のエサもキャットタワーも、全部本物になってたんだ!

 カプセルに付いた説明書を読んだら、この猫は覗き穴から見るまで、人形になるか本物の猫になるか分からないらしい。だから、今は本物でも、次見たら人形の事もある。どっちになるかはランダム、って書いてあるけど、僕は猫が選んでると思う。だって、あの後お姉ちゃんが何度か箱を覗いてたけど、一度も本物になってないからね!

 

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