Track5 1度きりの、高2の花火大会を君と 後編



○花火大会の会場・出店が立ち並ぶ通り(夜)

美桜と聞き手は一緒に屋台を見て回る。


//SE 人々がごった返す喧騒

//SE 美桜が聞き手に近付く足音


「こらー」


//SE 服の袖を引っ張る音


「ぼーっとしてたらダメだよ。

 花火大会で人が大勢いるんだから。

 油断したら直ぐにはぐれちゃうよ?」


「(緊張気味に)……ね、ねぇ。

 迷子にならないように、手、繋いでおこっか?

(取り繕う感じ)ほ、ほら!

 せっかくのお出かけなのにはぐれちゃったら悲しいでしょ?

(勢いで押し切ろうとする)だから、ねぇ! 手、繋ごう!」


//SE 手を繋ぐ音・何かが擦れる感じ


「も、もう!

 そんな恥ずかしそうな顔しないでよぉ。

(照れる感じ)こっちまで恥ずかしくなってきちゃうでしょ?

 手を繋ぐくらい小学生の頃に沢山したのに……。

 そもそも幼馴染みなんだからさ。

 これくらい普通でしょ?

 だから……」


//SE 美桜が聞き手の至近距離まで近付く足音


「(甘える感じ)手、握っててほしい。ダメ、かな?」


「(嬉しそうに)……ありがとう」


//バックSE 2人が歩く足音 ※開始

//SE 屋台で焼きそばなどを焼く音・祭り特有の音


「ここだけ見ると花火大会に来たっていうよりも、

 夏祭りに来たって感じがするね。

 ……どうする?

 まだ花火が上がるまで時間あるけど。

 せっかくだし、寄って行く?」


「そうしよっか。

 それじゃあ、どこから回ろう……

 どこか行きたいところとかある?」


「う〜ん、私はねぇ〜……ちょっとお腹空いちゃったかな。

 焼きそばとかリンゴ飴とか、何かお腹に入れたいかも」


「あぁ~~確かに!

 射的とかヨーヨーすくいみたいな夏祭りっぽい遊びもいいねぇ。

 せっかく来たんだもん。遊んで行きたいなぁ~……」


//バックSE 2人が歩く足音 ※継続 早歩きに


「あ! 金魚すくいとかもあるんだ! 

 向こうの方には綿あめとかラムネとかも売ってるよ!」


//バックSE 2人が歩く足音 ※継続 ペースダウン


「(悩む感じで)ん〜。どれも行きたいなぁ……

 ねぇ、今言った中でどこか行きたいところあった?

(不思議そうに)……ん? おーい」


//バックSE 2人が歩く足音 ※終了


美桜、立ち止まって聞き手の顔を覗き込む。


「(少し頬を膨らませて)……ねぇ」


//SE 聞き手に圧を掛けるように近付く足音


「(ちょっと怒った感じ)私の話、聞いてた?」


「確かにいつもよりテンションは高いかもだけど……

 今、あからさまに話題、逸らしたよね?

 ……聞いてなかったのなら、

 素直に〝聞いてませんでした〟って認めたら?」


「ふぇ?

 ……ちゃんと聞いてたんだ。

(ちょっと拗ねた感じで)もう。聞いてるなら最初からそう言ってよ」


「……そうだね。

 時間もあるから一つずつ回ろっか。

 でも、その前に――」


美桜、少し迷ってから聞き手の腕に抱きつく。


//SE 美桜が聞き手の腕に抱きつく音


「(拗ねた感じ)次、私と話してる時に他のこと考えたら怒るから」

 

「……気付いてないとでも?

 君、さっきすれ違った人のこと、目で追ってたでしょ?

(明るく)次、よそ見したらお仕置きだからね♡」


「うん。約束だよ?

(ヤンデレっぽく)破ったら針千本飲ますだけじゃ、許してあげないから♬」


「じゃあ、まずは……」


//SE 美桜が一歩、大きく踏み出す足音

//SE 美桜が女の子とぶつかる音 ※前のSEとほぼ同時。


「――痛! あ、ごめんなさい!

 ちゃんと前見て、なく、て…………

 え、えぇ〜と? 女の、子?」


//SE 人々がごった返す喧騒 ※フェードアウト



《続く》

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