幼馴染が派手になったけど好きなことに変わりないんだが

てつ

第1話 そう言えば

高校入学して早、1か月


「あんた、高校生になったんだから、いつまでも一人ぼっちじゃダメよ。

 お友達の一人や二人、絶対作るんだよ!わかった?」

ママはそう言ってたけど。


あたしの名前は大澤柚月、県立桐ヶ丘高校1年生。

小学校でも中学校でも友達を作ることが出来なかった・・・

極度の人見知りで、家族とは話しできるけど赤の他人になるともう。。。


「お姉ちゃん、どうしたら友達出来るのかな?」

美月姉さんはあたしの2歳年上で同じ高校の3年生。

とにかく、妹のあたしが言うのもなんだけど、美人なんだよねぇ。

それに勉強もできるしスポーツも出来て文武両道を絵にかいたような

自慢のお姉ちゃんなんだよね。


「柚月は人見知りだからねぇ。

 それを治すことが先決だろうけど、そう簡単には行かないよなぁ・・・」

あたしとお姉ちゃんは同じ部屋を使ってて勉強机もとなりにしていて。


「親友なんてさ、一人や二人だよねせいぜい。

 他は友達だけど、心を許してなんでも話が出来るのは、その一人二人かな」

あたしはお姉ちゃんを典型的な陽キャだと思ってたけど、

「ま、友達とか親友ってさ、いっぱいいればいいって思うじゃん。

 だけど本当の意味での親友とかって、それほど多くはいないと思うよ。

 人によりけりだけどさ」

と、あたしの顔を見ながら指先でペン回ししながら言う。

「あたしの知り合いに声かけてみるよ。ゆづに合うような子、紹介してってさ」

「うーん」


親友とか友達、

多ければ多いほど、あたしは良いものだと思ってたけど、

お姉ちゃんの話を聞いて、すこし考えを変えた方がいいかな?と思うようになった





5月

最寄駅を降りて学校までの通学路は街路樹が美しい新緑で彩られていて、

あたしの一番好きな季節なんだよね。


下駄箱で履き替え、階段を上がり廊下を進み教室に入る。


あたしの席は窓際の一番後ろ。

前の席に座っているのは長野リカちゃん

同じ中学校だけど、あたしとは住む世界が違う感じ。

クラスの一軍女子であって、読モもやってるらしいし・・・


まぁそんな毎日。

特にいじめられている訳でもなく、避けられている訳でもなく、

話しかけられれば、それ相応の答えはするけど、それ以上ではないから

話が続かない。

それが友達が出来ない一つの理由かもしれない。




ある日

「ほーら!席に着け!」

担任の渡辺先生の号令で朝のホームルームが始まった。

「今日は転校生を紹介するぞ。じゃあ入って」


入って来たのは・・・


金髪、耳にはリング。

学生服のボタンは上3つくら外してるし、そこから赤いTシャツが見えてる。

どこからどう見ても、ヤンキーって感じの男子

「うーっす!高田周平っす。よろしくっす」

「じゃあ・・・えーっと、一番後ろなんだが、すまんな」

「あ?いいっすよ!」


うちの学校は校則がゆるくて茶髪、ピアス、メイクはあまりうるさく言われない。

だからか1年生のうちから、がっつりメイクしている女子生徒も結構いて。


あたしですか?

そんなものしたことありませんけど、何か?



ん?高田周平?

どこかで聞いたことがあるなぁとは思ってたけど、

その時まで思い出すことが出来ず・・・


彼が指定された席は、あたしの隣。

「よっ!ゆづ!しばらくだな!」

その声が大きかったから、クラスメイトの視線を一斉に浴びてしまい・・・


「周平くん?あ!え!待って!そんな・・・・!」

正直、頭の中が混乱してしまって。


その日の授業はまったく身に入らなかった。


「ゆづ!一緒に帰ろうぜ!」

「どうして?周平くん?どういうこと?」

「どういう事って、オヤジの仕事の都合さ。


彼は幼稚園から小学校までずっと一緒だった、いわば幼馴染。

でも


どちらかと言えば、あたしとか他の子供たちにくっ付いて来るような子で

自分から何かすることはなく、大人しく、どこかオドオドしてるような子だった。


それが・・・


しばらく見ないうちに、こんなイケメンに成長していたとは。


「ゆづさぁ、お前友達いないだろ?」

「何よ!大きなお世話!」

「強がるなって、お前見てれば誰だってそう思うわ。俺が友達になってやるぜ」

「いいわよ!」


そう言って、その場から逃げようとした途端、

彼はあたしの右腕を引っ張って・・・


「お前が好きだ」

そう言いつつ、半ば強引にキスしてきた。


「んんん・・・やめて!」

「いいじゃん!キスぐらい誰でもするぜ」

「なんであんたなんかと!」


あたしはその場から離れて、急ぎ足で駅へ向かった。



(ふっ・・・あの時と変わんねぇなぁ・・・ゆづ!)



第1話 完






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