再会編④

マージィ「もしかしてトベさんも、リラックマに入っていたんですか?」


トベ「カオルさんよりは、リラックマの方がしっくりくるかも。」


マキ「だからマージィをリラックマだと思わなかったんだ。」


マージィ「それで私たち同じリラックマだから、全然噛み合わなかったんですね。」


トベ「クマだけに?」


マージィ「クマだけに(爆笑)。」


マキ「はいはい。クマだから噛み合ったり、噛み合わなかったりしたのね?話が。」


マージィ「トベさん目線のリラックマを知りたいです。」


トベ「僕目線なんてないよ。」


マージィ「テニス部がカオルさんの家じゃないでしょうか?」


マキ「じゃあ昔からテニス部にいるササカさんが、カオルさんなんじゃない?」


マージィ「コリラックマとキイロイトリは、誰なんでしょうね?」


マキ「モトキさんがコリラックマかな?よくテニスでタクマをライバル視していて、絡んでいたよね?あとはモリーがキイロイトリかな?モリーはマージィに封印されてたわけだし。でも今度はタクマが、カゴからモリーを出したってとこかな?」


トベ「大会のメインメンバーって意味なら、アマンダはどうするの?」


マキ「もう他にリラックマの登場人物はいないの?」


トベ「4人で全部だよ。」


マキ「マージィとは違って、タクマは5人目としてアマンダを受け入れていたんじゃないかな?ずっと昔からダブルスを組んでたでしょ?」


トベ「なんというこじつけ解釈!」


マージィ「そういうところも、私とは違ったんですね。」


トベ「5人目だからとか、全部ただのこじつけだよ。モトキさんは大会の後、テニス部に来なくなったし…。」


マージィ「なんでやめちゃったんですか?」


マキ「私も聞きたい。」


トベ「ちょうどマキさんもマージィもいない日だったね。」


マキ「もしかして、私が新しくテニス部に入ったせいなのかなって考えてもいたけど、何かあったのかな?」


事実、マキがテニス部に入った辺りから、モトキの様子が変わった。そしてある日を最後に、それまで毎回参加していたモトキは、一度もテニスに参加していないし、テニス部員の誰とも連絡を取っていない。


トベ「あの日はモトキさんが、突然練習メニューを決めたんだ。」


マキ「いつもは部長のタクマが決めてるよね?」


トベ「前部長の時代から受け継いだ練習メニューを、ただ続けているだけだよ。モトキさんは大会があった後だし、もっとみんなでテニスが上手くなりたかったんだろうね。でも練習の途中でアマンダが腕が痛いって言い出しちゃって、実は僕も正直ちょっと痛かったよ。」


マキ「タクマも痛くなるなんて、どんな過激な練習メニューなの?」


トベ「普段とは違う筋肉を使うとそうなるかも。その後の食事のときに、ササカさんが「来る者は拒まず、去る者は追わず」と発言して、モトキさんはテニス部に居ずらくなったんじゃないかな。」


マージィ「もしかしたらカオルさんも、そう考えてるかもしれないですね。それでマキさんが、新しいコリラックマになったんですか?」


マキ「えっ?私、コリラックマなの?」


トベ「よく僕にイタズラしてくるし、そう言われてみるとそっくりだ。」


マキ「私がタクマにイタズラすると、「こら」って叱られてるな。」


マージィ「こら(爆笑)。それはそっくり!もうリラックマとコリラックマだー(笑)。」


マキ「「こら」ってリラックマの口癖だったの?あとよく「こらこら」とも言うよね。」


マージィ「こらこら(爆笑)。「こらこら」がリラックマの本当の口癖です!」


マキ「そうなの?それはもうタクマはリラックマだよ。」


マージィ「2人はそういう関係なんだぁ(笑)。」


おそらくモトキはカオルさんの家に居づらくなってしまい、トベにとってコリラックマのポジションがマキに移った可能性がある。トベ、シゲオ、マキは現テニス部のメインメンバーだが、モリーだけは夏に進路が理由でテニス部を去っている。


マキ「モリーは去年の夏まではいたよね?なんでBBQのときに、まとめて送別会をしちゃったの?」


トベ「BBQのとき、メッセージカードにお互いにメッセージを書いたよね。同じ代で卒業するメンバーだから、お互いのメッセージが欲しいと思って…。」


マキ「1人だけ夏にすると、モリーだけマージィたちからのメッセージがもらえないってことか…。でも今思うと、一緒にしない方が良かったね。」


トベ「当時はマージィとモリーの関係が、そんなんだとは夢にも思ってなかったから…。」


マージィ「今は新しいキイロイトリが、テニス部にいますか?」


マキ「モリーが最後にいたのって、みんなで花火を見に行った日のあたりだったっけ?」


マージィ「そのときのメンバーの中に、キイロイトリがいるんじゃないですか?」


マキ「あのときは、確か6人で花火を見ていて…。そうだ!途中で雨が降ってきて、私の車の中に入ったんだ。でも1人だけ入れなくて、モリーだけ外で雨宿りをしたんだっけ…。」


マージィ「トベさんは、どこに乗ったんですか?」


トベ「助手席…。」


マージィ「そのときすでにトベさんは、マキさんのことが好きだったんですね(笑)。」


マキ「そういうことなの?でも後ろに座った3人のうち女性が1人だけだったから、ササカさんが助手席に座ってたタクマに助手席を女性に譲るように提案したんだっけ…。そしたらタクマは、モリーと外にいるって言い出したんだ。」


マージィ「トベさんは友達思いなんですね。その助手席に移った女性が、キイロイトリなんじゃないですか?」


マキ「BBQにも参加していたから、マージィも会ったことがある人だよ。キドリさんのことは覚えてる?」


マージィ「あの人が新しいキイロイトリなんですか?」


トベ「もういいよ。こじつけはやめよう。」


キイロイトリの話題に乗り気じゃないトベを横目に、マージィとマキの2人はそのまま考察を楽しんでいる。一年前の春にキドリはテニス部に加わり、卒業生お別れ会を兼ねたBBQにも参加していた。確かに、トベ、シゲオ、マキ、キドリの4人だけでダブルスをした日もあったし、その4人が現テニス部のメインメンバーになっている。その後もマージィとマキは、キドリとキイロイトリの共通点を探しているが、確信的な理由は見つからない。


実はこのときマージィとマキは、まだキドリとキイロイトリの共通点を知らなかった。ただ実際にはすでにトベとキドリの間に、とんでもない勘違い事件が起きていたのだ。「無自覚系天然」のトベのせいで、キドリには絶対に誰にも言えないことがあったという。現時点でその事実を知っていたのは、キドリ自身を除くとトベだけ。しかしこのとき無自覚系天然であるトベも、そしてキドリ自身もまだ何も気づいていなかったようだ。やがてその真相にキドリもトベも気づく日がやって来るのだが、それはまた別の話。今ここで言えるのは、「黄鳥籠女」という女性がカゴの中のキイロイトリでしかないということ。


そしてここで「初代無自覚系犯人」のマージィが「後の無自覚系犯人」を救うために、真の黒幕の正体を教えてくれていたのかもしれない。

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