魔法少女とたたかうことになりました
桜井小春のファンを名乗る人物
第1話 魔法少女とたたかうことになりました
学校帰り午後4時45分、世界を変える声がした。
「魔法少女に興味はあるかい?」
私は周囲を見渡した。しかし、誰もいない。気のせいかとまた歩き出す。
「魔法少女に興味はあるかい?」
また聞こえた。これは気のせいなんかじゃないらしい。
質問者の居ない質問に、誰も居ない空間に返答する。
「ないといえば嘘になる。」
実際、興味がないわけではない。
再放送予定の国民的魔法少女アニメが気になっていたところだ。
「それは同意と受け取るよ。」
その声とともに私の影が太陽を無視して通学路横にある神社の方へとのびる。
まるでここに来いとでもいうように。
一度通り過ぎてみる。だが、私の影は元には戻らない。
仕方がない、神社へ向かう。
境内に入ると私を呼ぶ声がした。
そこにいたのは黒い人型のウサギだった。
「呼びかけに応じてくれてありがとう。君に力を授けよう。」
突如、自分の目の前に魔法陣が浮き上がり私の体を包み込む。
私の体が服装が変化する。
それと同時に頭の中に様々な情報が大量に入ってくる。
私の『魔法』、『魔法』のルール、『目的』。
ああ少し頭が痛い。
変身が完了する。
髪が伸び、胸が少し出たが身体がほんの少し縮んでいる。
服装は黒いセーラー服、それとカーディガン。
「思っていた魔法少女と違う。」
思わず感想が漏れ出る。
魔法少女というには要素が無い。
せっかく物語の主人公的存在になれると思ったのに。
「そうか。だが些細な事じゃないか」
「どうして僕なんだい?それにまずは」
そう言ったところで何かを察知する。
「来る」
二人同時に言葉が出る。
これが先程、頭に入って来た『魔法少女』の能力の1つ、敵を察知する力。
頭上5~6mのあたりか、少し見上げた場所に、何かが現れる。
黒い穴。
空の中に開いた異常な穴。
そこから一匹の獣が現れる。
ワンワン吠えそうな口、犬ではない何か。
「こいつが侵略者か、こいつを倒せばいいんだな」
変身後の姿に気分は落ち込んでいたが、倒しがいのある敵の登場で私の心は静かに燃え上がる。
相手は侵略を繰り返し数多の世界を侵しながら生き永らえし者。
それが変身時に入って来た情報の1つ『敵の目的』。
いざ魔法を使う。
「いでよ『応答丸』」
いや違うな。
私の魔法はつまらない。ならば少しでも面白く。
「私にこたえ導け、
私が使う魔法の詠唱に決まりはない。
私の詠唱に応じて剣が手の中に現れる。
その剣には特別な装飾など何も無い。
だが私の手によく馴染む。
振り回し易さ等色々と試したいことはあるがそんな暇はないはずだ。
それに多分、大丈夫。
変身時の情報が正しければ私が負けることはない、絶対に。
侵略者がもういいかな?とでも言いたげにこちらの様子を慎重に伺っていた。
律儀にも待ってくれていたのか、相手もこちらの情報を探っていたのか。
その行動の真意は分からない。
いざ戦いのとき。
敵が口を開け突進してくる。
その突進に合わせてこちらも敵に剣を振るう。
真っ直ぐ降ろす。
一応補足しておくと私は剣道などしたことはない。
素人の剣の振り。
そんなものでも敵は真っ二つになった。
「これ一体で終わりか?あっけないな。」
「ああ、これは本丸じゃないだろうからね。」
「ところでだ。色々と」
良い言葉が出てこない。
「色々と説明不足すぎる。」
かろうじてでてきた言葉がこれだ。
「ああ、すまないね。まずは私の名前から応えよう。
私の名前はノワールだ。君の名は?」
「私の名前は
よろしく。」
「それじゃあ次に何故、侵略者がやってくるかだが。
ちょっと待て魔法少女がやってくる。」
その言葉に少し驚く。
「私以外にもいるのか。」
「ああもう一人スカウトしに来てる仲間がいる。恐らくそういうことだ。」
「じゃ、その魔法少女とたたかうことになるんだな。」
魔法少女と共にたたかう。
友達になれるかな。
そう考える。
そして自分からも質問する。
「ところでどうして私なんだ。」
ちょっと疑問に思っていたこと。
「そこを通ったから。」
思わず笑ってしまった。
「適当だな。だから私の名も知らなかったのか。」
そんな風に会話を楽しんでいたら目の前にもう一人の魔法少女がやってきた。
いや、上から跳んで来たという方が正しいだろうか。
着地の衝撃で彼女の周りには砂埃が立っている。
衝撃的な登場に驚愕するが落ち着いて彼女の衣装を確認する。
ピンク色のドレスに身を包み美しい紅色の髪、まるで女児アニメに出てくるのような、自分が楽しみにしているアニメのような可愛らしい衣装。
私とは全く違う。
ノワールと趣味が違うのか?。
彼女が口を開く。
「お前が侵略者か?お前が侵略者だなあ?ぶっ殺してやる!」
その格好から出る突然の殺害宣言に思考が停止する。
「はぁ?待て待て待て???」
ほんのわずかなフリーズから必死に言葉を出す。
だが彼女は待ってくれない。
本気のパンチが私のお腹にクリーンヒットする。
私の身体は文字通りバラバラになった。
「これはまずいね。撤退だ。」
ノワールのその言葉を最後に私は沈んでいった。
まさかとは思うが魔法少女と魔法少女でたたかうってことじゃないよな。
そんなことを思考しながら。
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