第6話 手紙を書こうその①

手紙一つを書くために、空き教室みたいな場所に来た。こういう場所に来るとバックレたくなる。


「まず、レターセットをお選び下さい」


レタスみてぇな名前、手紙にセットなんてあるのか。初めて知ったぜ。

レターセットはいっぱい種類があった、シンプルな白から、可愛いふりふりのピンク色まで。封筒のシールも迷うほどだった。

俺は黄色の花柄のレターセットを手に取る。


「手紙って誰に渡すんだよ」


「鳶様にお渡ししましょう」


果たし状なら貰う事があったが、手紙を書いて渡すのは初めてだ。なんて書けばいいんだ?女はなにを書いたら喜ぶ?

硬そうなペンを握りしめて、机に座り思いついたまま文字を書く。


「ペンの進みが早いですね。それだけ鳶様にお気持ちが…ううっ、尊い」


気色悪りぃヤツだな。人の手紙ジロジロ見てんじゃねぇよ。目潰しすんぞ。

プラ、プライバシー?の侵害だろ。


「なんて書いたんですか?」


「え"ー、『昨日は無理させて悪かったな、次する時はもっと手加減した方がいいか?俺的にはまだヤり足りなかったが。ちょっとくらいはお前に合わせてやる。』って書いた」


「刺激が強すぎます!」


「うわっ、汚ね。鼻血だすなよ」


手紙で喧嘩を誘うのは、刺激が強いのか。でも、喧嘩以外に書く事ねぇぞ。


「おいゴラ。女が喜ぶ手紙の書き方教えろ」


「もちろんです!」


メイド女が、本をクソほど持って来た。

まさか今から読むってわけじゃないよな。


「では、手紙の書き方講座を始めます。鳶様をキュンキュンさせてやりましょう!」


キュンキュンだと?キュンキュン=ドキドキ

ドキドキ=動悸 動悸=恐怖


「キュンキュンなら昨日させた。俺が馬乗りになったら、本能的にドキドキするって言ってたぞ。俺はアイツに乗られても、キュンキュンしなかったけどな」


あんなちんちくりんに跨られても、恐怖なんか感じねぇよ。なにせ、

俺の方が強いからな!

まあ、でも、なんだ。ちょっと色っぽかったな。喧嘩じゃなかったら…

いや、ないな。絶対に。


「下と上を体験されたんですね!?ゴフッ」


メイド女がうるさいのでつい、顔面を殴ってしまった。俺の拳が、メイド女の顔にめり込む。傷はつかねぇように加減してやったんだ、逆に感謝しろ。


「ナイス拳です…」


「早くしろよ、次は腹いくぞ」


「えっと、まず。手紙の基本ですが、相手の名前と自分の名前を書く事です。ラブレターの書き方を参考にしましょう」


ラブレターだぁ?小中学生でも、メールか口で言うぞ。いつの時代だよ。縄文か?


「鳶へ、燕より。ですよ」


「俺をバカにしてんのか、そんぐらい分かる。舐めんなよ」


ペンからメキメキという音がして、ボキっと音がなる。


「おわっ!?取り寄せたばかりの耐久性抜群、竹ペンが一瞬にして!!」


ふん。

なにが耐久性抜群だ。折れてるじゃねぇか。羽がついた新しいペンを渡された。


「んで、内容は」


「お好きにお書き下さい。刺激が強すぎない程度に」


喧嘩は刺激。メイド女はそう考えてんだな。確かにそうだ。朝メシとか、昼メシを誘うとかか。口の方が早い気もするが。


「書いた」


「確認させていただきます」


『鳶へ、朝メシで赤飯が出ただろ?お前は白米派か?玄米派か?それとも赤飯派か?俺は白米派だ。玄米は味と食感が無理で、それが俺の気持ちだぜ。燕より』


「い、いいと思うんですが…もう少し改善する必要がありますね」

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