第9話 儀式に関する怪異、あるいは精神汚染

出典:【真夜中の怖い話】

媒体:ポッドキャスト

掲載年月日:2019年9月24日



これ、俺の兄貴の代で起きた話なんだけどさ。 うちの小学校(T市立N小学校)、六年生になると情報の授業が始まるんだけど、兄貴の年のクラスで、ちょっと変なことがあったんだよ。


ある男子が、授業中にこっそり変なサイトにアクセスしたらしい。

学校のパソコンって、普通は制限かかってるんだけど、そいつは抜け道を見つけたんだって。

で、開いたのが

啼綯哭だいなな儀式の参加者確認ページ”っていう、

なんか古びた掲示板みたいなサイト。



―――――――――――

そっから、そのサイトにアクセスしたやつが妙なことを言い始めたんだって。

『今年は体育館じゃなくて理科室でやるんだって』

『赤い帽子、誰がかぶるか決まった?』とか。最初はふざけてると思われてクラスのやつらには相手にされていなかったみたいなんだけどさ、数日後には別の子が

『去年は音楽室だったよね』って言い出した。

―――――――――――



兄貴は、その儀式の内容が気になって

"啼綯哭儀式"がどこで行われるのかその話をしている奴らに話を聞いたらしいんだ。

赤い帽子をかぶった子が、最後に名前を呼ばれる。

椅子が七脚並んでて、一人だけ座らない。

それだけ話すと、どの子も人が変わったように別の話をし始めて結局儀式のあらましについて聞くことはできなかったらしい。


しばらく、"啼綯哭儀式"について兄貴の学年の中で話題になって教師でさえその話をしてたらしいんだけど、ある日を境に兄貴のクラスでも、話をしてた子たちが、ピタッとその話をしなくなったらしい。

まるで、忘れたみたいに。



……でさ、兄貴が言ってたんだけど、儀式の話が広まり始めた頃、学校の鶏舎の鶏が全部いなくなったんだって。 鍵はかかってたし、柵も壊れてなかった。

足跡もない。 先生たちは「野犬の仕業かも」って言ってたけど、兄貴は違うって言ってた。


『あれ、儀式に使われたんじゃないかって思った』って。

俺は冗談だと思ったけど、兄貴は真顔だった。


鶏舎の前に赤い布切れが落ちてたって話もしてた。

紅い帽子の話とも符合する。

それを見たとき、兄貴は“誰かが準備を始めたんだ”って思ったらしい。


俺がその話を兄貴から聞いた次の日に『赤い帽子って、誰がかぶるんだっけ?』って友人に聞かれたんだ。

その子、兄貴の話なんて知らないはずなのに。


……たぶん、今思うとこの話は“聴いたら広がる”んだと思う。

兄貴は今でも、小学校の前を通るとき、ちょっと足を止める。

俺も、赤い帽子を見ると、なんか落ち着かない。


だからさ、もし誰かが“啼綯哭儀式”の話をし始めたら、聴かないほうがいい。

聞いたら、次はあんたが“参加者”になるかもしれないから。



※なぜ、語りてと語り手の兄は、啼綯哭儀式に対して当事者意識を持たなかったのか。

"聴く"のではなく"聞く"と書かれていたことが原因かもしれない。


[構成要素]儀式、生贄、学校、精神汚染、赤い帽子

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