在野研究者のとある研究資料について

水嶋鏡

第1話 本伴宏昌につて


 はじめまして、水梨音也と申します。


 ここに投稿する内容は、私の後輩である本伴宏昌が生前にネット上の個人ブログや動画投稿サイトから収集した怪談をもとに、個人情報に関わる部分を省き、体裁を整えたものです。


宏昌とは大学院時代からの付き合いで、修士号取得後は在野の研究者として「デジタル怪談学会」という小さな学会に所属し、現代の怪談文化を丹念に追い続けていました。

彼の研究は、インターネット上に散在する怪談を収集・分類し、現代人の感覚でそれらを整理するとどんな傾向が見えてくるのか、また柳田国男や小泉八雲が記録した民間伝承とどのような違いや共通点があるのかを探るものでした。


生前、私たちは頻繁に意見を交わし合い、彼の研究の方向性や怪談に対する視点について深く理解していたつもりです。

しかし、彼の遺言によりご両親から研究資料を引き継いだ際、分類されていない怪談の原稿が多数見つかりました。ファイルの数は膨大でお恥ずかしい話ですが私一人ではどうしても、全ての話を読み明かすことはできないと感じており、ここに皆様のお力をお貸しいただければと思います。


これらの怪談を彼が、どんな意図で記録したのか、その背景に触れることで、彼の研究の核心に少しでも近づけるのではないかと感じています。


次回からは、彼が残した未分類の怪談を一つずつご紹介していきます。

もしご興味を持っていただけましたら、ぜひご意見やご感想をお寄せください。皆様と共に、この記録を読み解いていけることを願っております。


―――――――

◆作品のルールについて◆


◆語り口調

全ての怪談に共通することとして、読者の皆様に、鮮度の高い怪談を読んでいただくために、原文の語り口調をそのままにしている。


◆作品上の固有名詞の代替について

 アルファベットを使った表現に置き換えている。

 例:S県、T市

 例:Aさん、Cさん

 ※本文章群の中で同一の固有名詞が出た場合には同じアルファベットを使用する。


◆構成要素について

 文章群全体の理解につながると考え物語の構成要素について筆者が思う属性を末尾に記載している。


◆作品の掲載順序

 一連の文章群は本伴宏昌の所有していたUSBメモリのデータに保存されていたデータから古い順に掲載している。

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