⑤
「……うん?何これ」
「な?外れないだろ?」
「いや、そんなはずはっ…」
凛久くんが言った通り本当に指輪は動かず、はめる時と違ってピクリとも動かない事態に、私はさすがに焦って言った。
「ご、ごめん!え、凛久くん太ったの?指が太くなったとか…」
「ば、バカ!俺は明日結婚式を控えてる身だぞ。そんなわけあるか!」
「でも、こんなに抜けないんじゃ…」
…え、ということは、最初はあまり信じていなかったけど、この指輪にはあのおばあさんが言っていた通り、「絶対にその人と結ばれる」という力が宿っているんだろうか。
いや、にしたって、別に凛久くんの様子はいつもと同じだし…。
なんて考えていると、やがて「やっぱり」と意を決したように凛久くんが言った。
「っ…ダメだ!こんなことやってたってラチがあかん!」
「え、何するの!?」
私がそんな凛久くんにそう問いかけると、次の瞬間凛久くんがはっきりと言った。
「家にある包丁で指輪を切るんだよ!」
「っ…!?」
凛久くんはそう言うと、迷いのない様子で家の中に戻って行く。
一方、凛久くんのそんな言葉に大きな衝撃を受けながらも、慌ててその背中について行く私。
そして、物凄く戸惑いながら言った。
「う、嘘だよね!?そんなの!そんなことしたら指も切っちゃうよ!?」
「嘘じゃねぇよ。でも俺は片手だけじゃこの指輪は切れねぇから、お前切って」
「!!?」
凛久くんはそう言うと、ようやく辿り着いたキッチンで包丁を取り出す。
だけどそんな凛久くんを前にして、もちろんそんなことができるわけもなく、私は思い切り首を横に振った。
「や、嫌だよ!せめて病院に行って外して貰うとかしたらいいじゃん!指輪を包丁で切るなんてそんなことまでしなくていいでしょ!?」
「何言ってるんだよ!こんなの指を切るしか方法がねぇだろ!そもそもお前が勝手に俺の指にはめたんだから、お前が責任もって切れ!」
「!」
そう言われた直後、私は凛久くんに包丁を手渡される。
そんな…こんなことって。
確かに私も今日自殺を計っていた身だし、どうせ死ぬんだからと投げやりになっていたけど…。
でもだからといって、こんなことが出来るわけがない。
私はどうしてもその包丁は受け取れなくて、目の前の凛久くんに言った。
「っ…やだ!私そんなこと出来ないよ!簡単に言わないで!」
「何でだよ!?自分の指じゃねぇんだからいいじゃん!」
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