第2話 昭和天皇のプレッシャー
代わって出てきた昭和の指導者達は、自分の都合にそった世界観を想定し、大局を考えずに走り出した。しかも彼らは財閥と組み、賄賂政治を行わない民衆さえ顧みなくなった。金融恐慌がおこり、民衆が生活苦にあえいでも、指導者は自分達の私利私欲を優先した。
民衆はこんな指導者に失望して、新たな指導者を求めた。
新たな選択肢こそが、軍部である。彼ら軍人の青年将校達の供給元には、多くの貧しい民衆出身者がいた。彼らは、貧しさにあえいでいる民衆の苦しみを肌で感じ取っていた。知り合いの娘や近親の娘が、親の借金のかたで悲しい目にあっていることに軍の訓練に身が入らなかった。
彼らが日本のために何かしたいと考えて行動した時、国民が彼らを支持して応援したことが悲劇の始まりだった。軍部が統帥権をたてに独走を始めた時、誰も止められなくなった。
いや、止められる人物は一人いた。
昭和天皇である。天皇ならば、理論上は止めることができるはずだった。しかし昭和天皇は黙認した、そうせざるをえなかった。
どうして、こんなことになったのか。このことは、誰もが疑問と思うことである。
この理由を検討するため、昭和天皇の生い立ちからみてみようと思う。
昭和天皇が、当初目指した人は間違いなく明治天皇である。昭和天皇は、生まれた瞬間から期待され道は決められていた。というのは、父の大正天皇が祖父の明治天皇から落第を言い渡されていたからだ。
明治天皇は、大正天皇の次の天皇に期待していた。昭和天皇は、その分プレッシャーが大きかったはずだ。
昭和天皇は、幼少期から英才教育を受けることになった。明治天皇が望む天皇像は古来の天皇でなく、また大正天皇のような西洋型の王でもなく明治式の新たな天皇だった。
手本となった明治天皇は、どのような人物だったのだろうか。
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