空港
たんぜべ なた。
午後の飛行場
本日は9月某日の午後4時。
まだまだ陽は高い…高いのだけれど、今日は仕事が早く片付いたので、早退の下知が下った。
眼前に広がるのは飛行場。
帰宅が早まる日は、ここで時間を潰すのが、俺のささやかな『お楽しみ』である。
そろそろ、首都圏行きの旅客機三機が離陸を始める頃合いだ。
予定通り、
いつもと違うのは、このタイミングで救急車のサイレン音が空港に向かって侵入する事だった。
(何かあったかな?)
鉱石ラジオのチューニングを
ラジオが盛大にガナリ立てている。
『…こちらJAL475便、
繰り返す
『
JAL475便へ!
状況を説明されたし!』
『こちらJAL475便、
乗客に…。』
ここで、
「何かを急いでいる…」
通常旅客機は離陸前の最終確認を行うために一旦停止した後、最終確認後にエンジンの全力運転を開始…離陸していくのである。
「
先発機が夕日を正面に受けながら飛び立つ…そして、真っ直ぐ西へ飛行するところ、航路を確保すべく南西へ進路を取る。
先発機の離陸後、間隔を開けること無く次発の旅客機も
『
JAL475便へ!
繰り返す
『JAL475便、
次発機が南西に進路を取ると、夕日を背に受け西から侵入する旅客機が視認できる。
ちょうど同じ頃、
見る見る近づいてくる旅客機の影。
『こちら
JAL475便!
旅客機の
「追い風に、
やはり、
『
JAL475便へ
!四番
入ってくれ!』
『JAL475便、
先程、
機体が停止すると、タラップ車が横付けされ、地上員が二人、タラップを上ってドアの開閉を開始する。
救急車からは、救急隊員が降り立ち、同じくタラップへ駆け上がっていく。
機体のドアが開き機内に入っていく救急隊員。
程なくすると、一人の女性が腰に毛布を巻かれた状態で、救急隊員に抱えられタラップを居りてくる。
後ろからはキャビンアテンダント一名と私服の女性一人が続く。
一団が救急車に乗り込むと、機体ドアが一旦締まり、タラップ車が離れ、改めて
さて、救急車は赤色灯を回転させたまま動く気配がない。
その横を、後ろ髪を引かれる様に、
三機目の旅客機が
離陸した旅客機が西陽に吸い込まれるように消える頃、別の旅客機が夕闇に染まった空から降りてくる。
さて、着陸した旅客機が
ゲートが開かれ、落ち着いた様子の救急隊員が降りてくる。
続いて、ハイタッチを交わすキャビンアテンダント一名と私服の女性一人。
二言三言言葉を交わし、私服の女性は再び救急車へ。
救急隊員が救急車へ乗り込めば、サイレン音も勇ましく、救急車は退場していった。
キャビンアテンダントは地上員と話し合い、地上員はヘッドセットのマイクに何かを語っている。
『ハッピバースディー トゥ ユー、ハッピバースディー トゥ ユー…』
ラジオから、牧歌的な歌が聞こえてくる。
『
お客様は無事出産された。
繰り返す、お客様は無事出産された。』
コックピットの歓声が漏れ聞こえ、程なくすると
空港全体もにわかに活気づいてきたところで時計を見れば午後5時15分!
今しばらくは余韻に浸りたかったが、これ以上遅れると、カミさんのカミナリが落ちてしまう。
(まぁ、夕飯の肴には持って来いのお話もできた事だし…)
そう思い、俺は車のエンジンに火を灯し、帰路に就く。
空港 たんぜべ なた。 @nabedon2022
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます