男性が希少でさらに男女間の貞操観念が逆転した異世界で、クリス・モモタローという少年に転生してしまった主人公。女性の方が力が強いこの世界で、クリスは聖者として女騎士たちに後方からバフ魔法をかけるのだが、問題はその呪文の内容。
「あれあれ~? もしかしてぇ、お姉さんたち苦戦してるんですかぁ~?」とか「くすくす、だっさ~い♪ 雑魚雑魚じゃ~ん♪」とか完全な煽りなのである。別に好きで煽っているわけではない。これは呪文の詠唱なのである。表情やしぐさが蠱惑的なのもそういうユニークスキルだから仕方がないのである。
そんなクリスのバフ魔法に、激しく興奮し劣情まで催しているのが前線の女騎士たち。このままいけば屈強なお姉さん方のハーレム待ったなしなのだが、ここでさらに大きな問題が発生する。クリスは童貞を失うと死んでしまう呪いにかかっているのだ……!
オスガキムーブ全開で女騎士をサポートするたびに、貞操=生命の危機が迫っているのだが、クリス本人はそのことにとことん無頓着。クリスの中に巣食う大妖魔ボブの冷静いなツッコミもむなしく響くばかり。このクリスと女騎士たちが演じるドタバタが非常に楽しいのだが、その一方で意外とシリアスな話も展開されており、そちらはそちらで大変面白い。ただの出オチでは終わらないなかなか侮れないファンタジーだ。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=柿崎憲)