エピソード4-2 ガキは嫌いだけど(警察官編:大小コンビ)(後編)

「すみませんでした! お二人が警察官だとは思わず・・・・・・」

「あー、うん、まあ、怖ぇ顔した兄ちゃんと幼児を膝に寝させた男がいたらそりゃ、まあ、通報されるわな」

「本当に申し訳ない。最近、ここら辺で子どもが被害者の事件が多発しているもので」


 若いお巡りさんへの10分ほどの弁解の後、二人は児童誘拐事件の犯人だと間違われ、通報されていたことが発覚した。そして、主に香川かがわが自分達は警察官であること、少女は保護した子どもであることを説明した。北道きたみちは特に説明はせず、香川と若いお巡りさんのやり取りを見ていた。


 一般人に犯人だと間違われてしまうほどの形相で話していたとなればそれはもう、他の警察官達からしても大した形相だったんだな、と香川は感じた。


「あんたもそれの見回りか。殊勝なこった。なあ、北道きたみちさんよ?」

「・・・・・・ズボンの左前のポケット。5人分の中指の骨」

 香川の声を無視しながら、北道は若いお巡りさんをじっと警戒するかのように見る。そしてポツリとそう、呟く。


「え、」


「あ、なるほど。じゃあ、ちょっと確認しますねぇ」

 そんな北道の言葉に何かを察したように香川は瞬時に若いお巡りさんのポケットに手を突っ込む。若いお巡りさんが抵抗するまでもなく、香川はすぐさま、をそこから取り出す。

 香川は右手では骨の破片を持ち、左手で若いお巡りさんの腕を掴む。


「あらら~。これってそういうことかあ」

 香川の膝の上で眠っていた少女はいつの間にか、北道の膝の上に移動させられていた。


 北道もそのことに香川が動いた数秒後に遅れて気付いた。一瞬、自分の膝の上で寝ている少女を見て目を見開きはしたものの、溜息を一つつくだけで言葉は発しなかった。


 お巡りさんは香川の手から逃れようと身体を捻るが、それも間に合わない。

「ちょっと、一体、何を!」

「拳銃ホルダーの中、小型ナイフ」

「ちょ、やめろ!」


 若いお巡りさんは香川に対して、小型ナイフをホルダーから出すが、それよりも早く北道の言葉を聞いた、香川にナイフをいとも簡単に取り上げられた。器用に、素早く。誰の目にも見えないほどのスピードで香川は動く。抗うことは出来なかった。


 それと同時に香川は若いお巡りさんを組み敷く。明らかに警察官が持っているはずのない小型ナイフ。そして、自分にそのナイフを向けた。間違いようもなく、敵意・殺意がある証拠だった。


「はいはい、抵抗は無駄だからな、坊主。・・・・・・ああ、こりゃあ、確実に犯人だろ」

「あ、あんたらはっ、一体!」

 若いお巡りさんの言葉に数秒、二人は考える。


 どうせ、あと数分で本庁や所轄の刑事達が通報だったり、報告を受けて、来る。言わずとも彼に自分達の素性は明かされる。


 そんなときに自分の素性を現状、児童誘拐殺人犯と思われる人物に自ら、明かすべきかどうか。


 すぐにその答えは出た。



「○○期生一番の運動能力持ち、香川真人まさひとだよ。そういうの聞いたことねぇの? 知らないなら知っとけ、バーカ」

「○△期生、観察力は当代随一の北道かい。警察学校で聞かされなかったか?」



「あんたらが、あの、地方組、ちほうぐみ

 言葉を失うお巡りさん。いや、この場合は犯人とするべきか。


 地方組


 それはとある数世代の数人をまとめて呼ぶ呼び方だった。

 そう呼ばれる者達の名前は各地方の都道府県を連想させるものらしかった。

 香川に組み敷かれている犯人も、どうやら、その呼び方には覚えがあったらしい。


「「地方組ぃぃ??」」


 そして、「地方組」というまったく、聞き慣れない言葉を聞いた二人の顔面は、いつにも増して、言葉に出来ないほどの形相だったようだと後に駆け付けた警察官は語ったという。




「つーか、あんた、その嬢ちゃん見捨てねぇんだな。あんたみたいなタイプは見捨てるかと思ったわ」

「あ? あー、俺は確かにガキは嫌いだけど、ガキを見捨てるほど人間は終わっちゃいねぇよ」


 そんな話をしながら、二人は警察官の到着を待つ。


 少女は未だ静かに、現実の二人の苦労など露知らず、北道の膝の上で夢の世界を旅する。

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