33.ひそかに読書をしている故に

「他の部員とも活動外で遊びに行くのでしょう? 聞きましたよ、先日の事」

「あっ、そういう……」


 ただ同性と私用で会うことをデートと呼称するタイプの人種! というか、そういうのってこう、仲良い人同士のものでは? また勘違いさせるような事を言って……!

 私は心の中でぎりぎりと歯噛みした。イマジナリーハンカチまで現れる。くやしい。

 つくづく罪作りな女。私以外にそういう事して大変な目に遭っても知りませんから――いや。そうなったら今度こそ、真面目な相談相手くらいにはなりましょう。

 悲しみの海に沈みゆく自分を引っ張り上げたこの後輩の事を、こうやって私は一生突き放せないままでいるのだろう。そんな事が出来なくても、いつかは彼女の方から離れていくのだろうけれど。


「そういう事です。もう中間テストも近づいていますし、それが明けたらで良いんです。どうか私とも遊んでくれませんか、湯田先輩」


 ずい、と迫られる。近い。


「こ、断る理由は無いんですけれど。その」

「ではテスト明けの日曜日、昼の二時に。集合場所は――」

「待っ……待って! ください! 佐野さん」


 流れる様に予定がセッティングされかけている。私は手を突き出して止めようとして――無闇に触れる事になるのでやめた。ほら物理的にも突き放せない。代わりに私が数歩下がる。壁に背がついて、明後日の方向に目を逸らせば施錠された扉が見えた。

 階下から私達は見えない位置。みっともなく泣く姿を隠す時には良かったのに、今は何だかおそろしい。こんな陰キャが美少女に近付かれている所を目撃されるのもそれはそれでおそろしいけれど。


「何かご都合が悪い事でも?」


 違います違います、私はぶんぶん首を横に振った。

 休日の起床時間は遅い私。市川姉妹の影響で履修開始したアニメもその頃には最新話に追いつけているだろうけれど、おそらく配信で後から観る事になっていそうな私。問題なく向かえる時間です。大丈夫です。


「わ、私、本屋やアニメショップくらいしか行く場所の引き出しが無くて……原作のポーズでプリクラ撮ったりお洒落なカフェで推し活したり、そういうのはしないというか、出来ないオタクで。憧れはないわけでもないんですけれど、でも。だから佐野さんを楽しませる自信はなく」


 同じオタクであれど、A4痛バを肩に掛けるキラキラした人種にも私は気圧される。だって皆とんでもなくふわふわに甘くて可愛いんだから。並んで同じ事をやる勇気なんて湧いてこない。そんな事した時の私はきっと、カットフルーツの中に混ざるじゃがいもめいてしまうのだ。ああ、佐野さんにこんな事言ったら。きちんと否定してくれるのだろうな。


「憧れはないわけでもない、なら」


 顎に手を当て。佐野さんはにこりと笑う。

 うっ、やめてください。私はそれに弱いんですって。


「私と一緒にしませんか、湯田先輩が初めての事」

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