第2話 リーデンと結婚したい

 リーデン少年の正装を見て、私の両親は「傾国の美少年が現れた」と思ったらしい。

 活発な印象を与えるはずの半ズボン。何故か、いけないものを見ているような気にされる。その点、私も同意見だった。

 私の部屋で、リーデン少年は泣きじゃくっていた。

「すぐ上の兄さんが言ったの。私が男だとジョセフに知られたら、もう一緒に遊んではいけないって」

 胸が締めつけられる。

「お兄さんは、どうしてそんなことを?」

「ジョセフ。それは、あなたがこの国唯一の王子だからですよ」

 騒ぎを聞きつけた両親がやって来る。

「こんな可愛らしいお嬢さん……」父は咳払いした。「本当は、男の子だね。でも、まわりの者はそう思わない。それどころか、お前の婚約内定者だと勘繰られている」

 自然と口角が上がる。

「問題ありません。本当に婚約してしまえば良いのです」

「この子は、男の子だ」

 目を逸らしたら、負けだ。先に折れたのは、父だった。リーデンのほうに向き直る。

「君には、双子の妹がいるそうだね」

 リーデンが頷く。

「そのどちらかとジョセフが結婚すれば、君は私たちと縁付くことができる。気軽に遊びに来られるよ」

 父がどうかなと首を傾げる。

「私はそれで構いません」

「私が構うのです、父上」

 ツカツカと歩み寄り、父は私の頬を叩いた。

「陛下!」

 母が声を上げる。

「お前より年少の者が了承したのだ。お前も従いなさい」

 後れて頬がジンジンする。手で触れ、回れ右する。

「妹君は妹君だ。君じゃないのに」

 リーデンは、所在なげにしている。

「キャアアア!」

 何事かと、全員が母を凝視する。母はちらとリーデンを見、肩に手を置く。

「二人とも、僕のために争わないでと、この子は思っているはずですよ」

 ね? と目で確認する。こくこくと頷き返す。

「大変、迷惑です」

 言い切った。……。私はソファに腰かけ、腕組みして考えた。

「あれ?」

 確かに、二人の仲が切り裂かれるかもしれないからと、リーデンは泣いていたのだ。

「陛下、見て下さい。我が子のポンコツぶりときたら!」

「でも、リーデンと結婚したいのは本心です」

 父は握り拳に息をふきかけた。リーデンが、後退る。

「そうだわ! 主従契約というものがあります」

「主従契約?」

 リーデンが首を傾げる。私は指笛を吹いた。白ふくろうのブランが、私の腕に止まる。

「私は、ブランとその契約を結んでいるんだよ」

「使い魔との契約は、従魔契約じゃないの?」

 ブランは神獣で高貴なものだから、対等の契約なのだと教えてやる。

「つまりね、魂の結婚ですよ」

「リーデンと結婚できる!」

 私は万歳した。











  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る