第15話
スグルは坂上先生の様子を見ながら周りの仲間に気をつけるように言う。詳細を知らない杏と拓哉は皆の緊張感に驚いて、「どうしたん、スグル。」と杏が言うとスグルは
「坂上先生の様子がおかしいんだ。」と指指す。
幽霊のような立ち姿になっていた。
坂上先生は顔をおもむろに上げると、腕を上げた、次の瞬間、予想つかないところからつむじ風が来る。
何が起こっている?「思念波を何かに反射させているんだ。周囲の上の方を見ろ。」ショウがスグルに言い放つ。
スグルは施設内の上部を見る。体育館によくある観客通路のような部分が周囲を走っていて、いくつかの箇所に幅広のソ-ラ-パネルがついたような機器が見えた。
あれか?残響音効果を狙うものかとも思うが何かしら反射するにはうってつけの形だ、と思った瞬間、その機器のパネルの前で渦を巻く風が生じてこちらに向かってくる。
「ちっ!」スグルは舌打ちしながら、自ら思念波で風を作って応戦する。
しずかも上手く四方からの攻撃に対峙する。杏と拓哉はテ-ブルを盾にして避けているが「ちょっとスグル!これ何なの?映画のロケ?」、スグルは
笑いながら「そんなものさ、後で説明するから。楽しみな。」と言うと講堂の中央部にしずか、いやサリーと出て行き、転がっているテ-ブルの影から上部の機器を壊しにかかる。「サリー、距離はあるが二人合わせれば充分壊せる、行くぞ!」二人は目配せして合わせ、竜巻のような風を二人で起こし、一つの機器を破壊する。しかし数が多い。
「このままだと、消耗戦だ。サキの気をそらせればリストバンドを坂上先生につけて操りから解けるようにできる。スグル、やってみるか。」とショウが提案、
スグルはショウが考えていることを理解し、リストバンドに新たにつけたパ-ツのボタンを押す
「実体同期コンプリート!」スグルが呟き、立ち上がる。そしてスグルの姿がぼやけ、そこに仮面騎士の姿が浮かんでくる。「ショウ様!」しずか、いやサリーが叫ぶと、スグル、いやショウは呆然とする坂上先生に近づきリストバンドをつけて素早くONにする。坂上先生はその場に倒れ、風は収まった。
「やれやれ、終わったな。」ショウはサリーに向かって話す、そしてリストバンドのスイッチを一つoffにするとショウはスグルの姿になる。「サリー、驚かせてすまない。さっきのは幻だ。しかし、私はここにいる。」スグルの姿でのショウの話にしずか、いやサリーは苦笑しながら「びっくりしましたわ。幻でもショウ様の姿が見れて良かった。」
あみも口に手を当てながら、「今の何ですか?すごかったけど。」と近づいてくる。「坂上先生、いやサキを一瞬でも戸惑わせることが出来ればと思っていたんだけど上手くいった。」スグルは答える。
「ヒデさんに頼んで面白い機能をつけてもらったのさ。ほんとすごいよ、君の兄さんは。」
杏と拓哉は遠目に皆のやりとりを見ていた。
「何か、すごいことに足踏み込んでないか?スグルは。」拓哉は驚きを通り越して笑っていた。
「うん、でもウチらのスグルだよ。拓ちゃん、ウチらのスグルは何とかするよ。」
杏は微笑ながら呟く。「そうだな、いつもそうしてきた。何とかするだろうな。」
帰りに近くのファミレスに杏と拓哉を連れて行き、あみとこれまでの経緯を二人に説明する。
二人は驚くと言うよりかなり面白がっていた。
「と言うことは私達にも同期する相手がベ-タ界にいるってことね?」と杏が言うと
スグルは
「そうらしい。でもどこまで1対1対応かはわからないけどな。」
「でも今同期したりしているのは向こうの世界の戦争中の連中ばかりなんだよな。危ないことは間違いない。」
スグルはうなづくが「しかし、戦争としては結着がついている。ショウ達は負けたんだ。しかし、ベ-タ界のパワーバランスを壊さないように着地点を探しているんだ。」
その時、ショウが意識下に入ってきたのでスグルは実体同期する。「正確には負けとは言いたくないが、実際上は負けたんだ、認める。
しかし、XN国はBELL国と上手くやる素養がない。そもそも戦争するはずがない国同士だった我々の国とXN国が戦って1国になることがBELL国にとってどういう意味かだ。
実は我々の国はBELL国から王妃を向かえていた。つまり私の母だ。
しかし、母は私を産んですぐ他界した。BELL国は大変残念がっていたが私がいた。つまりBELL国は侵略はしないが親戚筋なんだ。
私の処遇や考え、ましてや安否がわからないままでは何もしないだろうけど。YS国がXN国側と決まったら。。」とショウが話すと
「そうなったら?」杏が詰めると
「そうならないように私はこちらに来たんだ。」
とスグルの姿でショウは宙を仰いだ。
その日の帰り道、スグルは杏と拓哉と店を出てしばらく歩いた。
「スグル、お前は相変わらずいろいろな事を起こすなあ。」
拓哉何からかうように話すと
「俺が起こしているわけじゃあない。勝手に周りで起こるんだ。」
杏は「スグル、気をつけてね。いつもいい方向に転がるとは限らないのよ。」
「わかっているよ。杏。ありがとう。二人を巻き込んで済まない。でも結局は心強いんだよ。」
「水臭い。任せておけ。助けられるところは助ける。」
「ありがとう。拓哉。助かるよ。」
スグルと別れた後二人は「なあ杏、俺たちも同期相手いるんだよな?早めに知っておいた方が良いんじゃないか?」杏は少し考え込んで、
「私はいい。どうしようもなくなったら確認するけど。今はいい。」
「そうかな。わかった。しばらくは静観な。」
杏は何か思い出しそうなのだが思い出せないことがあるような気がしていた。
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